エジプト人とお酒について

 実は昔は大酒飲みだったのですが(内緒)、イスラームに関心を持つようになってから、ほぼまったく飲まなくなりました。
 酔っ払いに甘い日本の風習は良くないと考えていますし、飲酒運転は論外ですが、夜の街の堕落した様子を見るだけで気分が悪くなります。
 そんなわたしでも、お酒が日本社会で果たしている役割をわかっていないわけではないですし、こちらに来てあまりに悪し様にお酒が罵られていると、ちょっと弁護したくもなります。
 エジプトはムスリムだけが住んでいるわけではないし、外国人観光客が多いので、レストランにはお酒もあるし、名産のビールもあります。
 ムスリムの中にもちょっと飲んじゃう人がいるそうですが、ほとんどのムスリムはまず飲みません。M先生は格別純真な人なので、お酒を飲むなんて論外だと思っているし、本当に凄い害毒のある悪魔の飲み物かのように信じています。
 先日、マクハー(カフェ)の話題になった時、「日本にもマクハーはあるか」と聞かれました。
 「カフェはあるけれど、社会的な役割は違う。ほとんどのカフェは、社交や出会いの場なわけじゃない。でも、先生は嫌いだろうけれど、お酒を飲む場所がそういう役割を果たしている。お酒は日本人にとってシャーイ(お茶)みたいな位置づけなんだ」「日本人だって、やたらに沢山お酒を飲むのは良くないと思っている。今の若い日本人には、お酒を飲まない人も多いし、無理やり飲ませるのは悪いことだと考えている。でも、日本には日本の文化があって、お酒はその中で社会的な役割を果たしているんだ」。
 そう説明したところ、今までお酒が話題になるたびにイヤな顔をしていた先生が「なるほど」と納得した様子でした。
 ただ単に「お酒は日本の文化だ!」と叫んでいるだけでは、相手は聞こうとしないでしょう。理解を得ようと思ったら、まず相手を知り、どういう説明なら受け付けてくれるのか、少しずつ話を進めていくしかありません。
 逆に、エジプト、というかアラブ社会全般に、踏んだりけったりなことが続いたせいか「理解して!」とだけ叫んでいる風潮が強い気がします。彼らが帝国主義の犠牲となったのは事実ですし、ガザやイラクで行われたことを看過するわけにはいきませんが、ただ「アメリカが悪い、プロパガンダのせいでイスラームが誤解されている」とわめいているだけでは、相手に伝わるわけがありません。
 アメリカが嫌いなら、なおのことアメリカを知る必要があるし、知った上で、少なくとも最初は彼らのわかりやすいように、話をもっていかなければ始まりません。
 アラブ社会全般について、PRやマスコミ戦略というものに拙い印象を受けます。
 偉そうなことを言えるほど学も根性もあるわけではないのですが、エジプト人にさんざん冷かされ、日本の母親にはエジプトやイスラームを悪し様に言われ、板ばさみでションボリしている身としては、できることから一歩ずつやっていきたい、というより、やらないとしんどくてやり切れない気持ちです。

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