エジプトの結婚しない女

エジプトの結婚しない女

 「オールドミス」。社会は彼女たちをこう呼び顕微鏡の下に置き、単に結婚適齢期を過ぎただけだ、とみなす。彼女たちを取り巻く視線は、心地よいものではない。結婚するには「変わり者」といった中傷が投げつけられる。一方、白髪をたくわえた既婚男性や男やもめが、彼女たちを熱望する。この現象は、エジプト社会にとって新しいものではないが、その割合が日に日に増加している。何かが間違っていて、それに注意しなければならない。部屋に閉じこもっての研究や、エアコンのきいた事務所やアカデミックな理論からほど遠い何かが。こうした女性の数が、千二百万人以上に達しているのだ。誰の責任なのか?
 答えるのが難しい質問で、ただ疑問符ばかりが湧いてくる。とりわけ、婚期を過ぎてなお、心の狭い男を恐れ、男の迷妄より未婚の炎を選ぶ女性たちがいるのだから。興味深いことに、何百万ものこうした女性が、何度も結婚の申し出を断っていることだ。彼女たちの中には、それぞれの理由で、一時的な結婚をする者もいるかもしれないし、また何人かは一度ならず婚約したものの、最終的には経済的または性格的な理由で破棄している。
 最も興味を惹かれるのは、「オールドミス」のほとんどが高い学歴を持つ教育のある人々だということで、彼女たちの中には医師はエンジニア、修士や博士を持つ者もいて、一方で社交的で刺激的な生活を送っている。奇妙なことに、未婚のまま三十を迎える女性の数の増加する一方で、婚約が復権している。ただし、現代的な形態で。コンピュータによる結婚事務所やインターネット上の結婚サイトが増えており、結婚相手を求め何百もの女性が幅広く活動している。
 (後略)

 日本では三十過ぎて独身という女性は珍しくありませんが、エジプトでは結婚プレッシャーが遥かに強く、師匠だったまだ若いF女史も、未婚なのに左手の薬指に指輪をしていました(外国人がナンパ避けによくやる方法ですが、エジプト人も様々な圧力に対抗する方法として使うらしい)。
 社会が「遅れている」というより、そもそもの文化的背景として、エジプト社会は大家族的で女性の抑圧度も高いですから、結婚していない女性の辛さは日本の比ではないでしょう。
 「見合い話」も次から次へと押し付けられるそうですが、それでも結婚したがらないのは、家庭に入ることと引き換えに手放さなければならないものが、これまた日本より遥かに大きいからです。一専業主婦として生きたいならそれも結構でしょうが、高学歴で職業生活の中で自己実現していきたい女性には、辛いものがあるでしょう。大学も卒業させてもらえないケースもあります。
 (عنوسة(عوانسは未婚女性ということですが、spinsterということで、「歳を取ってるくせに結婚していない」ニュアンスが含まれているようなので、「オールドミス」(死語)にしておきました。
 سى السيدというのは、心の狭い男、といった意味の俗語表現のようです。

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