イル=ワラークで「プロパンガス危機」悪化 「来ない」車を待ち道をうろつく住民たち
一月十四日のプロパンガス倉庫の火災の後、イル=ワラーク地区でプロパンガス危機が悪化している。家庭用ボンベの価格は20ギニーまで上がり、商店での価格は35ギニーに達した。
焼けた倉庫のあったイル=ワラーク十番通りから数メートルのところでは、二十人近い女性が、自分たちの空のボンベを頭に載せて助けを求め道に広がり、プロパンガスの車が通るのを待っている。倉庫火災の後、プロパンガス売りの車には、居場所がないのだ。
主婦のフージヤ・ムハンマドは、地域からボンベがなくなって、ガジーラトゥ・ムハンマドから歩いてやって来た、と語った。闇市場でも不足するようになり、20ギニーにまで値上がりし、これでは七人家族の家計が耐えきれない。「旦那は貧しい布張り職人なのよ。プロパンガスに20ギニーも使っちゃったら、言葉で飲み食いしてくっての?」。
主婦のユスリーヤ・アフマドは、プロパンガスがなくなった怒りをこう表した。「朝七時に家を出て来て、子供が試験から帰ってきても食べ物がないのよ。倉庫の火事の日からずっとこの調子。毎日九時間以上待って、いつ終わるかもわからないのよ。だからイル=バーグール(訳注:旧式のプロパンガス)まで使ってるの、医者に止められているのに。煤煙がひどくて、子どもたちはアレルギーだから」。
フワイダ・アフマドは語った。「この地区にある通りと言えば、空のボンベを運んでいるトゥクトゥクが、プロパンガスの車のいる場所を探しているばかりだ。これは都市伝説になっていて、車の着く時間とか止まっている場所とかの噂が沢山ある」。
カイロには都市ガスもありますが、ガスの来ていないお宅はプロパンガスを使っています。車とか自転車とかロバで、ガス売りのオジサンが回ってきます。ガスを金属の棒か何かで「カンカンカン」と叩きながら巡回していて、お豆腐屋産のラッパみたいな感じです。
ずっと前に「أنبوبةはパイプと学んだけれど大家さんがガスボンベの意味で使っている」と書いたことがありますが、エジプト方言でأنبوبةと言えば、まず第一にこのプロパンガスのボンベのことです(最初は大家さんの勘違いかと思ったら、みんなそう言っていたw)。
أنبوبةにはもちろん、フスハーとしての管とかパイプとかの意味もありますが、水道管とかガス管とかは普通مسرورةと呼ばれています。
الباجورイル=バーグールという言葉は初めて見て、いかにも外来語のアーンミーヤっぽいのですが、手元のどの辞書にもなくネットでもよくわからず、エジプト人のお友達にメールして尋ねたところ「プロパンガスのすごい古いタイプで、田舎とかで昔使ってた」と解決しました。
こういう「もう使われていないアーンミーヤ」というのは、一番調べにくいですね。古典的な言葉は、難しくてもとりあえず大きい辞書には載っていますから。

