フォーリン・ポリシー「イル=カルダーウィーの反対者たちは、彼を『アラブの冷たい戦争』の原因と考えている」
アメリカの作家で高名な中東政治研究者マーク・リンチは、ムスリム・ウラマー世界連盟会長ユースフ・アル=カルダーウィーを、この地域の諸問題に対するアラブの一般的意見を感じ取ることにおいて「最もよく認識している」と表した。議論をまとめることで「多くの実績」がある上、彼が公衆の意見を率いれば、多くがこれに従う。
リンチが一昨日、アメリカの「フォーリン・ポリシー」誌の記事で語ったところではアル=カルダーウィーの反対者たちは、彼をこの地域における「アラブの新たなる冷たい戦争」の原因と考えている。この戦争は、ガザやハマースやアブー=マーゼン(訳注:ファタハのマハムード・アッバース議長のこと)に対する立場、そしてイェメンでの出来事についての彼の考えを巡り勃発したものだ。彼の意見はアル=ジャジーラで放送され、インターネットの世界中のサイトで広まっている。
このアメリカの研究者が付け加えるところでは、この「反目」をフォローすることは、アラブ政治において現在、何が地域を分裂させ、感情を刺激しているのかを観察するための「優れた窓」である。アル=カルダーウィーは、いくつかの政治的議論の中心点だったのだ。
彼は、世界中のイスラーム・ネットワークから幅広い共通の部分を作り上げる人物で、テレビスターであり、多くの著作を表し、ハマースを擁護し、世界的ムフティー(訳注:ファトワ-を出す人、イスラーム法学者)の立場からインターネットにおけるイスラーム指導者とみなされている。
「フォーリン・ポリシー」でリンチは、アラブの諸問題に対する彼の立場は、アラブの一般的意見からの答えを測るのに最も益があり、と示した。アル=カルダーウィーは人気があり、注目を惹く能力があり、とりわけ彼の近著「ジハード法」以降は著しい。この著書で彼は、占領への抵抗が認め、アル=カーイダについては世界に狂気の戦争の火を放ったものと非難している。
リンチは、近年にアル=カルダーウィーを巡り議論を刺激したものとして、四つの主題を挙げている。その第一のものは、エジプト政府による金属障壁建設を、ガザ包囲を強化し、合法的でもなければシャリーアに反する、としたファトワ-で、これはエジプトの怒りを買った。
第二のものは、ムスリム同胞団の新指導者にムハンマド・バディーアを選出することに対し、沈黙を保ちコメントを拒んだことだ。これは彼にとって「予期せざること」だった。次は、イェメン政府とアル=ホウシ族の戦争を仲裁すべくサルマーン・アル=アウダらイスラーム宗教者への彼の書簡に関するもので、最後にファトハとハマースによるパレスチナの内部分裂がある。アル=カルダーウィーはエルサレム防衛を呼びかけ、パレスチナ当局を批判した。
ユースフ・アル=カルダーウィーはエジプト人ですが、ムスリム同胞団への関与により最終的に国外追放、カタル在住。
Wikipedia : ユースフ・アル=カルダーウィー
マーク・リンチによる元記事は、多分こちら。
Foreign Policy
フォーリン・ポリシー誌ブログ「パスポート」日本語版
著作などを読んだこともないので、極めて大雑把なことしか言えませんが、アル=カルダーウィー氏の意見というのは、多くのエジプト人の共感を呼ぶものに見えます。逆に言えば、「アラブ人ムスリム」の最大公約数的な妥当な意見を言っている、とも言えますが。
個人的にも割と共感しますが、「パレスチナの戦いは侵略に対する防衛であり、外部に対する戦い故に肯定される、テロは内部に対する暴力であり肯定できない」等と「正論」(少なくとも、多くのエジプト人にとってこれは「正論」だし、わたし個人にとっても「正論」だ)を言っているだけでは埒があかないという一面もあります。

