フスハーの学習でわたしが使った主な教材は、Al-kitab Al-asasi 2の後半とAl-kitab Al-asasi 3、أدوات الربط The Connectors in Modern Standard Arabic、他は新聞や独自プリント、勝手に読んでいた本、等です。
Al-kitab Al-asasiはアメ大出版から出ている定番の教科書で、評価も高く、わたしは一巻から使っていて大変思い入れがあります。ただし、すべてがアラビア語で英語による説明は一切ないので、まったくの入門者にはとっつき難いです。本当にゼロから始める方は、まず日本の一般入門書で入門文法をマスターしてからの方が楽です。
Al-kitab Al-asasiは、
Al-Kitab Al-Asasi 1
入門文法と身の回りの基本的な表現。
Al-kitab Al-asasi 2
初級から中級の文法と現代アラビア語読解。
Al-kitab Al-asasi 3
中級以上の文法と古典アラビア語読解。
という構成になっていて、特に二巻は現代アラビア語テクストに慣れるのに格好の教科書だと思います。最後の方のいくつかのテクスト以外、特別難しいところはありません。
ただ、三巻になるとガラッと雰囲気が変わります。
三巻は、各章ごとに一つの古典テクストの抜粋が扱われるのですが、最初に筆者について、次に著作について、三番目に扱うテクストについての説明があり、最後に古典テクストそのものが来る、という構成になっています。テクストの後には、練習問題と文法解説、そして毎回最後に詩が一つ取り上げられています。
このうち、「当該テクストについてのテクスト」の部分は、難しくありません。極普通の現代アラビア語文章で、Al-kitab Al-asasiを二巻まで終わらせた方なら、難なく読みこなせるでしょう。
ところが、その後に来るのは本物の古典アラビア語文章ですから、非常に難しいです。抜粋ですからほんの数ページなのですが、文章を読んでいるのやら辞書を読んでいるのやらわからないくらい苦しみました。
また、最後に載っている詩も、一部を除いて非常に難解で、はっきり言ってわたしは途中から飛ばしてしまいました。
文法も中級以上のハイレベルなものが扱われています。
はっきり言って、古典アラビア語に興味のない方なら、Al-kitab Al-asasiは二巻までにして、その後は他の教材や一般の現代アラビア語テクストを読みこなしていった方が合理的でしょう。
ただ、色々な学者や文学者の文章を拾い読みし、幅広い知見をつけるには持ってこいなので、わたしはなんとか齧りついていました。
時々クルアーンのアーヤが例文に取り上げられていたり、預言者様صの演説等、イスラーム関係の話題が結構入っているのが、個人的には嬉しかったです。
ちなみにal-Kitab al-asasi Lexiconという別冊が出ていますが、ただの単語集なので全然要らないと思います。英語・フランス語・ドイツ語の訳が載っています。
أدوات الربط The Connectors in Modern Standard Arabicは、その名の通り「接続詞」に注目した教科書で、各章ごとに何種類かの接続詞がテーマとされ、その例文と練習問題から構成されています。英語の解説があります。
大学受験英語の参考書のようで、親しみ易い構成で、初級卒業レベルの方が取り組むのに丁度良いでしょう。分量も少なく、価格も高くありません。
ちなみに辞書は、定番のHans WehrとPdicに入れた辞書(ラップトップの中なので持ち歩かなかった)を使っていましたが、某図書館で見つけて使った現代アラビア語小辞典が思いのほか良い辞書でした。語彙数ではHans Wehrに遠く及ばず、解説があるわけでもありませんが、日本語ですし、書き込みが少ない分、パッと見たときにジズルのイメージが漢字イメージに繋がる感触があり、日本人にとってはとても良い辞書だな、と今頃認識しました。
テクスト自体はエジプトにいれば新聞が1ポンドで変えますし、本も一般書籍は安いですから、素材には事欠きません。
問題はフスハーを「聞く、話す」ことですが、これは学校内と衛星放送以外はほぼまったく機会がありません。わたしは途中から、フスハーの授業すら読み上げ以外全部アーンミーヤだったので、フスハーを伸ばす、という意味ではちょっと問題だったかもしれません(エジプト人もそうやってフスハーを勉強しているのですが・・)。
でも、フスハーの音声というのは、発音の非常に綺麗なプロが語っているか、一般人の場合は大体ゆっくり話すので、聞き取りは難しくありません(詩の朗読やクルアーン等は、読んでも難しいので当然聞いてもわからないw)。
正直、今ではフスハーは読み書きができて、イスラーム関係のものが人並みに朗読できればいいや、くらいに思っています。フスハーは大好きですが、日常生活に使うにはちょっと重いです。
エジプト人が気を使ってフスハーで喋っていると、何だかロボが喋っているみたいで、こっちも気持ちが落ち着きません。「無理しないでアーンミーヤで喋って」と言いたくなります。
それでも、フスハーほどしゃぶってもしゃぶっても味の出てくる言語はそうないと思うので、死ぬまで地道に勉強続けます。綺麗なフスハーを読んだり聞いたりした時ほど、心が透き通る時はありません。
ちなみに、Al-kitab Al-asasiなどの「アラビア語によるアラビア語教科書」の前に使う本として、現時点から振り返ってお勧めできるのは、
アラビア語の入門 本田孝一
ステップアップ アラビア語の入門 本田孝一
基礎アラビヤ語 内記良一
現代アラビア語入門 黒柳恒男,飯森嘉助
です。
本田孝一先生の二冊は、非常に易しく平易な入門書で、最初の一歩に最適です。わたし自身は、「アラビア語の入門」はこの段階を越えてからであったので使っていないのですが、記念に購入して手元に置いているくらいです。
ただし、あくまで入門向けの簡単な本なので、入門文法でも網羅されているとは言いがたいです。
そこであと二冊の「いずれか」を使って、網羅的に基礎文法を勉強する、というバランスの取り方が、丁度良いように思います。わたし自身は「基礎アラビヤ語」を使い、非常に思い入れがあるのですが、大学等では「現代アラビア語入門」がよく使われているらしいので、こちらの方が良いかもしれません。どちらも、はっきり言ってとっつき難い本です。何も知らない人がいきなりこの本だけ渡されても、八割方挫折する気がします(笑)。
この他にも日本で手に入る教科書は片っ端から読破しましたが、最初は独習であまり効率の良いやり方だったとも言えないので割愛します。アラブ人の先生とAl-kitab Al-asasiを使い始めてからの方が、文法では一度初級に戻りましたが、ずっと伸びが早かったです。
フスハーの教材・勉強法 Al-kitab Al-asasiなど
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