超重いスーツケースに苦しみながら、久々にタクシーを拾い、空港へ。
今、カイロのタクシーは、従来の黒と白の「交渉タクシー」と、白黒チェックの「メータータクシー」が混在しています。数年後にはすべてメーター式タクシーに置き換わるそうで、逆に言うと、現時点で白黒チェックになっているタクシーというのは、比較的経済的に余裕があり、優良なタクシーということです。
白黒チェックが来るのを待ち、メーターを使うことを確認して出発(メーターが付いていても使わないドライバーがいるので、確認が必要)。結果的に、35ポンドと大変良心的な価格でした。
ドライバーも割と礼節のある人で、図々しく話しかけられることもなく、会話が始まってからも節度があり、話の流れで宗教を尋ねられた時も「失礼ですが、あなた様حضرتكはムスリマ?」という聞き方をしてくれて、好印象でした。
何でカイロにいたのか、とか、どの辺に住んでいた、これからどうする、といった定番の会話だけでしたが、車中でもほぼ完全に会話が聞き取れ、リズムよく会話ができたので、アーンミーヤの欠片も知らなかった半年前を思い、感慨深くなりました(わかり易い話題だったお陰ですが)。
イスタンブールでトランジットのトルコ航空。
イスタンブールには夕方着、日没後出発だったので、空の上からだけですが、昼と夜の街の風景を眺めることができました。綺麗な街並みです。なんだかヨーロッパのようで、空からの風景だけでも、カイロとはエライ違いです。思えば、半年前に着陸直前に空から見たカイロは、ギラギラといかにもドギツイ印象で、夜景からだけでも熱く濃厚な血の匂いがしたものです。
イスタンブールは緑もあるし、全体に落ち着いているし、トルコ人も(エジプト人に比べて)静かで礼儀正しいし、ご近所のイスラーム圏といってもこれほど違うのか、と感心するやら凹むやら。
大体、トルコ航空の飛行機に乗った瞬間から、一切アラビア語というものが存在しなくなります。イスタンブールー成田間や、エジプト航空のカイロー成田間では日本語のアナウンスがあるわけで、つまりは「乗客の中で多数派の言語」「国力に上回る言語」というのは、当該航空会社の国籍を問わず、飛行機内で力を持っているものです。ということは、トルコーエジプト関係においては、エジプトは全然相手にされていないということで、少しションボリします。試しにアラビア語でまくし立てても、客室乗務員はまったく理解してくれません。乗客もほとんど非エジプト人です。
まぁ、相手はEU加盟も視野に入れようというオシャレ国家ですからね。エジプトが「EUに入れてくれ」と言ったら、タライでシバかれてツッコまれそうですもんね。「自分アフリカやろっ」という。
そう思うと、あんなオシャレな国からの労働者を顎で使っているヨーロッパ様というのは、どんだけなんや!という気もします。あたしゃアフリカでいいよ、アフリカで。砂漠の方がいいよ。極東の黄色い猿だし、色の付いてるモン同士仲良くしましょうぜ・・。
英語で喋らざるを得ないのですが、アラビア語漬けのうちにむしろ英語が下手になっている上(シャレにならん)、特にここ数カ月、英語を口にすることに生理的な抵抗を感じるようになっています。何というか、英語では自分の言いたいことが言えている気がしない。何か屈辱的な気持ちになる。アラビア語では、たとえ満足に表現できなくても、そういう卑屈な気持ちには全くなりません。思い切り気持ちを表せる。舌足らずでも、わたしがわたしなのだ、という自信が持てる。
英語は嫌いや。何で我が祖国に原爆落としたりシオニストの用心棒やってる奴らの言語を使わなアカンのや。いや、別に彼らだけの言語ではないのですが、まったくの個人的偏見で、口にする度に自分が自分でないようなムカムカする気持ちになってしまいます。
イスタンブールー成田では、日本人老夫婦の奥の席だったのですが、前を通る時に「すいません、失礼します」と言ったら、「日本語上手ですね」と言われてしまいました。アバーヤにマント、サングラスという、いつもの「変な外人スタイル」のままだったので、無理もないですが・・・。頭のおかしい日本人ですいません。
しかし、我ながらこの風来坊スタイルがよく似合います。というか、普通の日本の女の子の格好がめちゃくちゃ似合いません。大体、日本の女の子は可愛すぎますよ。なんであんなに可憐なんや・・・うちには無理や・・・。所詮戦闘用なんや・・・うぅ・・・。
エジプト航空の飛行機には、クルアーンのチャンネルが着いていたのですが、トルコ航空は各席にオシャレなディスプレイがあってゲームまでできるのに、宗教チャンネルが影も形もありません。すごくショックです。アタチュルク主義者め!
でも、久々に普通の音楽などのチャンネルを弄っていたら、思いのほか楽しくて、すぐに機嫌を直してしまう。ひたすら音楽を聞いて寝ているうちに、あっという間に成田着。お金さえあれば近いね、日本。これがロバだったら一年はかかってるよ。
成田に着いて最初の印象は、とにかく空気が綺麗で、そして静か! この国では静寂が無料なのだ! 嗚呼我が祖国、麗しきかな汝が静けさよ。
すごく寒いのですが、事前にビビりまくっていたせいか、予想ほどのショックは受けず。それより、空港職員の方が大変礼儀正しく親切で感激しました。
京成電車の中で、お年寄りに席を譲る。子供みたいなことですが、こういうところはエジプト人を見習いたいし、イスラーム的にも義務だと考えています。
途中の駅で席が空いたところ、中国人のおばちゃんが大声で呼んで座れと言ってくれる(多分)。あぁ、この感じはエジにちょっと似ています。エジプト滞在中、わたしの中国人イメージがかなり良くなったのですが、このおばちゃんにも愛しさまで感じられます。
アンタらとウチらは色々すごく違うけど(特に体重)、そんなん大したこととちゃうやんね。うち、豚肉食べんしお酒飲まんけど、鳥の鍋とか一緒につついたらめっちゃ楽しいやんね。
それにしても、どんな大荷物を抱えていても、日本人は絶対助けてくれませんね。成田近辺でスルーされるのは当然ですが、地元駅近辺まで来ても見向きもされない。別に助けて貰わないでも問題ありませんが、エジプトではあり得ない状況です。
というわけで、とりえあず日本に帰ってきましたが、ブログはぼちぼち続けます。
帰国
エジプト留学日記