前二回は実際に外国人と結婚したエジプト人を追ったものでしたが、今回は社会学者の見解。
観光都市--ここでエジプト人は、外国人の妻を見つける
社会学教授「大抵は失敗する。双方の譲り合いが成功の鍵」
エジプト人と外国人では、結婚の目的が異なる。それでも、特定の地域で、それは明らかに増加している。異なる文化がより多く触れ合う町では、外国人との結婚の可能性が増える。この件について、アイン・シャムス大学社会学教授ハサン・アフマド・スレイマーン博士は、エジプト人と外国人女性との結婚は非常に広まっており、とりわけ多いのは、ガルダカ、ルクソール、シャルム・ッシェーフといった観光都市でのエジプト人と外国人女性との結婚だ、と言う。これらの結婚は大抵、利害関係の上に成り立った結婚で、外国に行くことや、財産と手っ取り早い儲けを求めていたり、国籍を取得して移り住むためのものであり、ほとんどの場合、不平等な結婚だ。多くのケースで年齢の差があり、若者が年上の女性と結婚している。ここには相互の利得がある。女性は、彼女の国では好まれない年齢で、若者は彼女を物質的に利用するのだ。
ハサン博士が付け加えるには、この状況において、若者は、困難な状況や貧困、失業、結婚資金の上昇によりエジプトの女性と結婚できない、といったことの犠牲者でもあり、誘惑を前にし、ここに物質的状況を改善するための救い道を求めている。また、同じく多く見られるのは、研究や仕事のためにエジプト国外にいるエジプト人と外国人女性の結婚で、これも広まっている結婚と言える。ハサン博士は、こうした結婚には賛成できない、と述べ、社会を害し危険に晒すものだと言う。こうした結婚は、言語、宗教、文化、習慣、伝統の違いにより、大抵の場合失敗に終わる。考え方を巡り衝突し、年中口論し喧嘩するようになり、多くの問題と対立を生んでしまう。またこうした結婚は、子供たちに離散と精神的混乱をもたらす。多くの場合、害を受けるのは子供たちだ。父と母の間が紛争の中にあっては、子供たちの心は二つの異なる文化の間で散り散りになる。一つの文化は自由で、今ひとつは宗教的だ。結果として子供たちは、アイデンティティを抱けず、どこにも所属できず、これはまったく不幸としか言いようがない。
しかし、ハサン博士は、こうした結婚が成功する可能性を否定したわけではない。博士が語るには、生活を続けるために当事者双方が譲り合えば、この種の結婚が成功することはある。また、当事者全員が納得できるよう、中間的な解決を見出すには、何事につけ対話と話し合いがなければならない。また、子供たちの教育方法は重要なポイントで、前もって意見が一致していなければならない。何よりも、尊敬と相互理解がなければならず、お互いが相手の犠牲になり、直面しているすべての障害を乗り越え、安定した平穏な結婚生活にたどり着くために、譲り合わないといけない。
一方、アズハル大学イスラーム・アラビア学部教授ムハンマド・ワフダーン博士は、このように話を始めた。「ムスリムには、非ムスリムと結婚する権利があり、イスラームはこれを許している。しかし、必要に迫られた時だけだ。例えば異郷に暮らしていて、ムスリムの適当な女性を見つけるのが困難な場合などだ。また、決められた条件に合致していないといけないし、このうち最重要なのは、精神性、理解、価値観、基本的な考え方において、平等がなければならない、ということだ。妻は倫理的で、子供たちが健全に、イスラームの基礎と教育の元に育つよう、家と子供たちを守らなければならない」。ワフマーン博士はまた、結婚の目的は安定した家族と子孫をもうけることになければならない、と強調した。彼の考えでは「エジプト人と外国人女性の結婚は共同体の益とならない。とりわけ、結婚に置いていかれてしまった娘たちがいることを考えると。アラブのムスリムとの結婚の方が望ましく、そちらが第一だ」。
エジプト人と外国人女性の結婚手続きとその複雑さについて、弁護士で外国人・移民問題専門の法律事務所を営むアシュラフ・ムシュラフ氏は、こう語る。「エジプトの法律で、外国人との結婚を専門とする認証事務所が決められ、二つの専門事務所ができた。一つはカイロに、一つはアレキサンドリアにある。結婚認証手続きは一週間から二週間かかり、結婚契約認証のエジプトの法律により、外国人自身が提出することが条件付けられている。両者の年齢差は二十五歳を越えてはならない。最低年齢は、夫が十八歳、妻が十六歳で、必須ではないが、エジプト人二名の証人が望ましい。双方の権利保証のため、エジプトの法律は、当事者双方に対し、公共秩序に反しない限りで結婚証明書にいかなる条件をも追記する権利を与えている」。また、彼はこう付け加えた。「結婚を公式に行うために必要な書類整備ができないことから、ウルフィー婚(訳注:民法とイスラーム法の隙間を利用した民法上は無効な「結婚」)に逃げる者もいる。また、滞在と国籍取得については、夫婦の住む国の法律が決めることで、国によって異なる。一方、離婚については、双方の合意に基づく離婚はでき、公正省所属の外国人結婚認証事務所で扱われている。また、裁判による離婚もあり、申立人が告訴することで行われる」。
記事にあるように、物質的動機で外国人女性と結婚したがるエジプト人は多いですが、念のためにお断りしておけば、別段エジプト人が皆んな貧しいわけではなく、エジプトのお金持ちは日本のお金持ちなどより余程リッチです。逆に言えば、彼らが富を独占しているから、大多数のエジプト人が貧困に窮するわけですが。
物質的動機で結婚を求めること自体を責めても仕方ないし、双方が最終的に納得できるなら別に構わないと思いますが、実際のところは単にエジプト人の歯の浮くような口説き文句に踊らされて結婚してしまう人もいて、それでは結果が好ましくないのも当然です。
ましてシャルムのようなデラックス観光都市で浮かれたバカンスを楽しんでいる時の「旅先の恋」では、エジプトでなくても良い結果を出すのは難しいでしょう(それでも結婚という形式を取る、というか取らざるを得ない点で、イスラーム圏は素晴らしいし、どこか国のリゾート等における退廃こそハラームであり、むしろこいつらを国家か何かの名誉の元に殺した方が良いと思いますが)。
その辺は外国人も、前提知識を持った上で遊びに来るべきだと思いますけれどね・・。
「ムスリムには、非ムスリムと結婚する権利がある」とありますが、ここでの「ムスリム」は「男性イスラーム教徒」のことで、ムスリマ(女性イスラーム教徒)はムスリムとしか結婚できません。そしてムスリムと非ムスリムの間に生まれた子供(父親がムスリムの子供)は、自動的にムスリムになります。
ウルフィーというのは、エジプトで優勢なハナフィー学派(最もシャリーア解釈が緩いと言われる)の解釈に依拠するもので、証人を立て法の管理外で行われるものですが、普通は同居もせず家族にも知らせず、要するに「付き合っている」状態に近いです。
エジプトにおける外国人との結婚 1
エジプトにおける外国人との結婚 2
エジプトにおける外国人との結婚 3
エジプトにおける外国人との結婚 4
