日本人女性とエジプト人男性の結婚というのは、密かにかなりの数ののぼるのですが(そしてトラブルも非常に多い)、エジプトにおける外国人との結婚を扱った、非常に面白い記事がありました。

エジプトにおける外国人との結婚 posted by (C)ほじょこ
残念ながら日本人女性のケースは取り上げられていませんが、エジプト人にとっての「外国人との結婚」の意味と現実が、よくわかる内容になっています。
大抵のことは読めばわかりますが、最低限の前提知識を三点だけ。
・エジプト人男性と外国人女性の結婚は多いが、逆は極めて稀(主に宗教上の理由)
・エジプトでは婚外交渉などあり得ず、かつ結婚の敷居が非常に高い(男性の結婚費用が莫大)
・よって、外国人女性は誰でもエジプトではモテる
一面まるまるの特集ですが、興味深くとっつき易い内容なので、回を分けて全訳してみます。
外国人女性との結婚 愛と利点 時には不義も
エジプト人と外国人女性の多くの結婚が破綻している。愛と安定から程遠い誤った基盤の上に成り立っているせいもあり、また、文化が非常に異なるのにお互いが譲り合って歩み寄らないせいもある。例として、ハー・ハー(訳注:イニシアル、以下本記事の個人名はすべてイニシアル表記)(28歳)を見てみると、個人的な経験を経た上で、外国人女性との結婚は「エジプト女性との結婚より良いところなんて何もない。エジプトの女性の方が我慢してくれる」と言う。
彼はこう語る。「以前は、西洋女性の生き方、考え方に魅了され、外国人女性との婚約を夢見ていた。そして実際、エジプトに住み、あるホテルで働いていたルーマニアの女性と知り合った。彼女にとても惹かれ、わたしたちの間で愛の関係が育まれ、結婚した」。
結婚の後、惚れ込んでいる時期は終わり、状況が変わった。ハーは言う。「わたしたちの間で行き違いが始まったのは、わたしたちの生活、習慣、伝統への彼女の適応力が欠けていたからだ。彼女には、わたしの妻として受け入れ難い言動があった。それを彼女は、『普通で自然の』態度だと言っていた。彼女は退屈を感じはじめ、我慢できないまでになった。双方が自分の立場に固執し、別れることになった」。そしてハーは悟った。「エジプト女性より良いところなんて何もない」。文化も気質も考え方も一つだからだ。
一方、あるホテルの仕入れ責任者ファー・アイン(47歳)は、彼の経験についてこう語る。「およそ10年前、わたしはガルダカのホテルで働いていて、デンマーク人の美しい女性と知り合った。彼女の人柄に魅了され、すぐにわたしたちの間で関係を築き上げ、結婚に合意した。彼女の状況を片付けたり家族に報告するため、彼女の国を訪れ、エジプトに戻り結婚した。実際、わたしたちは結婚してガルダカで暮らし始め、わたしは彼女のためにホテルでの仕事を見つけ、一年の間は、文字通り幸せに生活していた。それから、問題が始まった」。
彼は出来事をこう語った。「わたしは彼女に、不審な言動があるのに気付いた。疑いがわたしの心に入り込んできた。とりわけ、彼女がわたしとの生活について攻撃的になってから。彼女はわたしを反動的だと言い、わたしたちの習慣や伝統を、生活を楽しむことや慣れ親しんできた自由を禁じる枷だと考えた。遂に、彼女の不義が発覚する日がやって来た。彼女を観察し、ホテルをよく訪れる一人と関係があることを確信したのだ。わたしは激昂し、わたしの男性性と誇りのために、彼女に仕返ししようと決めた。狂気の一瞬にわたしは理性を失い、車で彼女をはね、殺すつもりはなかったが、残念ながら彼女の命は失われてしまった。わたしは五年間を獄中で過ごした。彼女との結婚は、許すことのできないわたしの人生の過ちだった」。
時に、関係は利害関係だけで成り立っていることがある。観光関係で働くワーウ・カーフ(38歳)は、彼の物語を本紙にこう語った。「以前、わたしはエジプト人女性と結婚していて、息子たちがいた。普通の生活を送っていたが、ある観光都市で働いていたせいで、一人の美しくオープンマインドで裕福なイギリス人女性と知り合い、関係を築いた。わたしは彼女との結婚を考え、実際、結婚することになった」。
結婚の前、エジプト人の妻と話し、説得した。最初は反対していたが、説得の末に彼女は折れた。彼女もまた「息子たちの幸せを考える母」だった。離婚が同意され、彼はイギリス人女性と結婚し、彼女と共におよそ五年前に渡英した。エジプトには休暇の際に息子に会いにやってくる。
不義の疑いにより夫が妻を殺す、という、衝撃的な事例が含まれています。
アラブには名誉殺人の伝統があり(イスラームに由来するものではない!)、こういうケースは、表面化しないだけでまだまだ残っているようです。個人的に、こうした厳格な性社会規範自体は今ではある程度理解でき、その世界に嫁いだ以上、疑惑が真実であるなら、殺したとしても全否定しようとは思いません(夫が妻を殺すケースしかないので、逆も殺されてしかるべきだと思いますが)。
ただ、これは「疑惑が真実であるなら」という条件であって、真実であるかどうかは、かなり疑わしいものがあります。アラブの男性はとにかく嫉妬深いし、些細なことから疑心暗鬼になって、最終的な激昂を招いたのかもしれませんし、そもそも、彼女が不満を抱くようになった原因の一つは夫にもあったはずです。
名誉殺人قضايا الشرفというと、ルクソールでエジプト人の夫に日本人女性が殺害されたケースを思い出します。
この事件についても、夫の主張では「妻が浮気した」ことになっていますが、本当かどうかは怪しいものです。特にこの夫婦は、日本で暮らしていてバカンスでルクソールを訪れ、そこで事件になったのです。エジプトでなら、妻の不義が背景にあれば軽い罪で済むこと、エジプト人と外国人が本当に利害対立する場面になれば、エジプト人は必ずエジプト人の味方をすること、こうした事実を夫はわかっていたはずです。
個人的に、エジプトの「不自由さ」は、日本における奔放さに比べて、悪いものだとはまったく考えていません。しかし同時に、窮地に追い込まれた彼らが平然に二枚舌・三枚舌を使う場面を数多く眺めていると、「夫の証言」「家族の証言」などというものは、まったく信用できません。そうした不確かな根拠の元に「厳格さ」が運営されても、それは宗教的潔癖でも伝統でもないでしょう。
ルクソールで日本人妻を殺害した男性の刑は確か五六年で、記事の男性もわずか五年と、殺人としては非常識に刑期が短いのですが、これは不義の証人がいないからであって、証人が二人いた場合、なんと無罪になります。
ちなみに、コプト教会では離婚が公式には認められませんが、唯一可能なのは夫が妻の不義の証人二人を集めた時で、この場合は離婚が成立します(殺してはいけません)。
どちらの場合も、実際に証人二人を立てるというのはかなり難しいので、妻を殺して晴れて無罪、というケースは実際にはほとんどないらしいですが(名誉殺人自体、エジプトでは他のアラブ諸国より少ない)。
エジプトにおける外国人との結婚 1
エジプトにおける外国人との結婚 2
エジプトにおける外国人との結婚 3
エジプトにおける外国人との結婚 4
