アルジェリア問題と大使の責任、アムル・ムーサー

 今、エジプトの新聞のトップニュースは、サッカーワールドカップ予選を巡る「アルジェリア騒動」関連ニュースで占められています。在アルジェリアエジプト人が、アルジェリア人の熱狂的ファンによる暴力的な攻撃や脅迫を受け、職場や住居を破壊され、エジプトに脱出するような事態になっているのです。
 試合時のエジプト人たちの狂乱ぶりは言語を絶するものでしたし、カイロでの試合ではアルジェリア選手団に石が投げられた、という噂も聞いたので、熱狂した一部の市民が暴走した、ということかと思っていたのですが、そんな生易しいものではなかったようです。
 アルジェリアで「エジプトで選手団が襲われ、アルジェリア人が殺された」という誤情報が流されたことが原因とも、その情報操作の背景にはアルジェリア国内の権力闘争があるとも聞きます。
 カイロでの投石が事実かどうかもわからないのですが、その噂を聞いた時には「嘆かわしい」と自国を批判していたF女史も、アルジェリアでの事件に発展してからは、アルジェリア批判に鞍替えしてしまいました。
アルジェリア問題とアムル・ムーサー
アルジェリア問題とアムル・ムーサー posted by (C)ほじょこ
 この記事は、社説のようなコラム記事で、このアルジェリア騒動を扱い、かつアラブ連盟事務総長アムル・ムーサーの名前が出ているので、気になって読んでみたのですが、アムル・ムーサーの名は最後にちらっと出てくるだけでした(笑)。
 アムル・ムーサーは、エジプト国民の中で非常に人気のある人物で、次期大統領の座を巡っては、法的状況から最も有利な位置にありながら国民には人気のないガマール・ムバーラク(ムバーラク大統領の次男)とは好対照を成しています。
 格調高い文章で(コラム記事は大抵普通の記事より難しい)、訳はかなり覚束ないのですが、参考までに載せさせて頂きます。頼りなくてすいません。

アムル・ムーサーの知性へ
 エジプトとアルジェリアの間の危機が長く続くことを望む者は、一人もいないだろう。両国間の関係が本来のものへ戻る日が来るのは疑いようもないが、その日がいつ来るのかはわからない。わかっているのは、その日がひとりでに来ることはなく、偶然に訪れることもなく、それに先立つ歩みが必要だ、ということだ。
 アルジェリア当局が、この危機にあってとった行動に出たのは、理由のないことではない。確固たる理由があったのであり、その理由のうちいくつかは我々の眼前で明らかとなっており、いくつかは模糊として知れない。
 理由のうち明らかなものに触れさせて頂けるなら、またアルジェリア国の振る舞いが、同国代表が十一月十四日の試合前に空港からホテルへの移動中に遭遇したことについて、カイロから伝えられた情報に帰するものだと述べさせて頂けるなら、その情報とは、アルジェリア中枢にも、外務筋にも伝えられておらず、情報源は限定されており、その第一のものも、別のものも、はっきりわかっている。
 最も重要な第一の情報源は、在カイロ同国大使アブドゥルカーディル・ハッジャールである。彼は、同国代表が熱狂的ファンからの投石に遭った、という、まったく事実ではない内容を打電していた。また彼は、在カイロアルジェリア人の死傷者が出ている、と試合直後に報告書に書いているが、これも一片も事実ではない。
 アルジェリア中枢が何らかの態度を示す、あるいは何らかの立場を採るなら、誠に当然のことながら、危機の最中に目にしたように、基本的に、我国にいる彼らの大使からの情報に頼ることになる。例えばブラジルにいる大使からの情報で態度を決める、などということは考えられない。
 ここにこそ、我々が扱っている危機の核心、もし同国当局が現在起こっていることを乗り越えたいなら越えなければならない核心がある。アルジェリア大使自身がその渦中にある状況を否定することはできず、起こったことはこの状況に負っているのであり、これに沿った振る舞いをしたのであり、意図的にであれそうでないのであれ、多くの問題をもたらしてしまったのだ。
 このすべてが目下の我々の主題、事件を追っているすべての者、すべての読者がやがて目にするであろう我々の真の主題なわけではないが、このような種類の大使は、彼とエジプト国の間で将来対話を再開することはできないし、彼の手の及ばないかもしれない理由により、両国の関係を修復することもできないし、この男は、わたしの評価では、すでに権限を失い、権限のための手段も失い、使い物にならなくなるのだ。
 大使の価値を貶めたり、彼やかの国の人々を悪し様に言いたくはない。もし彼が彼の書いたもの危機の初めからを見直してくれていたら、このような意思がわたしの側にはまったくないのを見たことだろう。わたしは、目にし観察し、示してきた現実を語っているのだ。おそらくは、状況の力が大使自身より強かったのだろう。他の首都であれば、彼はかの国に尽くすことができたのだろう。この件について、一体どちらに向かって良いのかわからない。アルジェリア中枢なのか、同国外務省なのか。この二者に、アブドゥルカーディル・ハッジャールに、できるだけ近い今後の外務人事にて、エジプトの職から去るよう求めて欲しい。危機の当事者ではない別の人物がこの地位につき、再建の道を進めるように。あるいは、アラブ連盟事務総長アムル・ムーサーに向かい、できるだけ近い機会に、この要望をアルジェリアに彼の方法で届けてもらうのか。事務総長は必ずこの亀裂の修復を望んでおり、我々を守ってくれるだろう。彼は、この種の亀裂が、この悲惨な一頁に参加しておらず、それを覆い隠してくれる、新しい大使の存在の元でなければ、修復不可能だとわかっている。

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