おしん、アバーヤ、湾岸アラブ識別法

 最近日常ネタが少ないです。
 学校と図書館と家の往復で受験生みたいなルーチンが完成してしまって、今ひとつ変わったことが起こらないからです。
 いや、変わったことを起こしたければ、この街では非常に簡単なのですが(笑)、もういい加減「面倒なのが面白い」経験にも飽きてきたので、しばらくはコツコツお勉強でもして平和に暮らそうかと思っています。
・おしん
 エジプトで「おしん」が流行ったのは大分以前のことで、日本と聞いて「おしん」が出てくるのは、一定以上の世代の一部の人だけです。
 でも最近、日本人女性と結婚したがるエジプト男の一部に、「日本女性=おしん」というイメージが残っているらしい、と聞いて愕然としました。
 エジプトでは、国内恋愛事情の厳しさ等から、外国人女は誰でもモテるのですが、ただでさえも日本人は話下手でナメられがちなのに、こんな超絶能天気な幻想の犠牲になる日本女性がいるとしたら、悲惨すぎます。
 さすがにリアル日本女を前にしてある程度お付き合いがあれば目が覚めるんじゃないか、と思いますが、日本人観光客なんて掃いて捨てるほどいる状況でまだそんなことを言っている男が実在すること、エジプト男の凄まじい妄想ファンタジー力と先のこと何も考えていない勢いを鑑みると、本当に「おしん」の悪影響が存在するんじゃないか、とも思えます。
 いやまぁ、本当に「おしん」みたいなキャラの日本女性で、尚且つエジプト人と結婚して家族ぐるみで素晴らしい未来を築きたい、というなら止めませんが。
 「おしん」が海外で広くヒットしたことはよく知られていますし、自国の作品が肯定的に評価されていて、しかもそれが、「古き良き日本的美徳」を気持ち悪いくらい美化したものであれば、悪い気はしません(ちなみにわたしは見たことありません)。
 でも、「おしん」の存在がエジプト男による被害拡大に一役買っているのだとしたら、変に従順な日本女性イメージなど広まって欲しくない、という気もします。
 日本人は「何考えているかわからない」「怖がりで閉鎖的」とも言われますが、礼儀正しくて謙虚で勤勉、というのが、エジプトに限らず広く流布しているイメージでしょう。
 でもこれって、本当にポジティヴに受け取って良いのですかね。裏を返せば、ナメられているだけじゃないですか。
 トロい性格をナメられるのは当たり前ですが、わざわざこちらから「ナメてください」なイメージを垂れ流さなくても良いでしょう。
 「正直」だの「謙虚」だののイメージを持たれると、日本人としては自尊心が満たされるのかもしれませんが、「良い子が報われる」などというのは、狭い島国の自己満足的倫理観に過ぎません。せめて「おとなしそうだけれどキレるとシャレにならん」くらいには認識してもらわないと、カモにされるばかりです。
 権力が根底で暴力に支えられるのは言うまでもありませんが、日本ではこの辺の仕組みが洗練されずぎて、むき出しの威圧感でかろうじて律される世界での振舞いが、すっかり退化してしまっているように見えます。
 正義なき力でも、力なき正義よりマシです。正義なんてどのみち神様にしかわからないのですから、とりあえず力だけで十分です。
 「おしん」は要らん。というかいない。
 日本人は、真面目で頭が良くて、ついでに喧嘩が強くなければならない。
・アバーヤ探し
 寒さ対策にアバーヤ生活を画策しています。
 アバーヤというのは、アラブの女性が着ている黒くて長いズドーンという服ですが、これをかぶってしまうと、下に何を着ていても誤魔化せるので、非常に楽チンです。同じ伝統衣装でも、日本の着物と違って着るのも簡単です。
 初めはイスラーム的なものだと思っていたのですが、先生に尋ねたら「アラブに由来するものだ、キリスト教徒でも着ている」とのことだったので、ヒジャーブなしでも大丈夫でしょう。実際、数は非常に少ないですが、ヒジャーブなしでアバーヤを着ている女性(多分キリスト教徒)を見たこともあります。
 既に一着持っていて、時々これで外出しています。当然パンダにされるわけですが、普通の格好でも既に十分パンダなので、全然気にしません。日本でだってこれ着て電車に乗れます。バカは無敵です。かかってこい!
 ちなみに、今までの経験だと、アバーヤにサングラスで歩いている方が、むしろ普通の格好より絡まれる率が低いです。「シーニーがマスルの服着てる!」「オー、ビューティフル!」とかいうのは非常に多いのですが、この手の動物が吠えているみたいなのは元からですし、ナンパはされなくなります。際物すぎてエジプト男も敬遠するのでしょう。素晴らしい。
 近所のガキどもは、既に「中国人はナメてかかるとマジキレる」「蹴りが来る」と教育してあるので、問題ありません。
 冷やかし系で思い出しましたが、二人以上で歩いているエジプトのアホな若者とかガキが変なことを言ってきて、こっちがキレると、お決まりのように言った当人が言っていない連れの方を指差します。彼らなりのホモソーシャルな戯れなのでしょう。まさか本気で罪をなすりつけようとしている訳ではないと思います。
 こういう時は、ヤツの指差しに惑わされず、まっすぐ歩いて行って怒鳴りまくって五六発蹴ってくるのが正解でしょう。他人を指差しているヤツが、大抵犯人です。間違っていたらその時はその時です。
 そうそう、アバーヤ。
 一着しか持っていないので、コート代わりにもう一着くらい買おうとさんざん歩いているのですが、未だに決め手に欠けます。
 外国人には、ウストゥルバラドで買うのが一番楽です。スークに行けばもっと安いものもあるのですが、逆にもっと高くなる可能性も大です(笑)。最初の一着はギザのスークでさんざん値切って適正価格でゲットしたのですが、運が良かっただけでしょう。もちろん、ドッキとかザマーレクとか上品な地区は論外です。ウストゥルバラドも安くないのですが、カイロ中のお客さんが集まるせいか、イメージほど割高ではありません。値段も最初から書いてあります。
 でも、調べていると、値段がちゃんとうまいこと付いているんですよね。
 最初の頃は「アバーヤなんて全部真っ黒で一緒やん」と思っていたのですが、よくよく見てみると、細かいところでかなり差があります。飾りや生地、袖や裾のデザインなどが、非常に多様なことがわかります。
 ある程度目が養われてからチェックすると、可愛いものはちゃんと高いし、安いものは相応にお洒落じゃないんですよね。うまくできています。
 一番安物なら100ポンド以下でありますが、このランクで「欲しい」と思えるものには会ったことがありません。
 心が動くものは200ポンド以上、場合によっては300ポンド以上になります。日本円で10000円近いですから、カイロ基準なら清水の舞台から飛び降りるようなお買い物です(大袈裟)。
 荷物になるので何着も買うわけにはいかないし、ちょっと無理しても納得できるものを買いたいのですが、あんまり綺麗なのを買っても普段使いしにくいし、悩ましいです。
・湾岸アラブの識別法
 この間マクドナルドでコーヒーだけで粘って勉強していたら、外に出たところで、隣の席にいたアラブ人にナンパされました。
 隣に座っていた時点で、向こうも一人なので「声かけてくるかな」と思っていたら、待ち伏せ方式でした。もういい加減彼らの行動パターンは読み切れています。
 ただ、横で見ていた時点で「普通のエジプト人ではない」匂いがしました。TOSHIBAのラップトップを使っていたこと、周辺機器もどれも新しくて綺麗だったこと、その他にも服装の雰囲気が何となく違いました。
 話してみると、カタル(カタール)の人でした。
 湾岸のアラブは、いかにもな民族衣装を着ていなくても、段々勘で見分けられるようになってきました。湾岸のどこ、となると依然全然わかりませんが、洋服を着ていてもエジプト人と違います。
 一つは目つき。湾岸の方が、深く暗く、何を考えているのか読みきれない雰囲気があります。エジプト人ほどわかりやすくない。悪く言えば、より信用できない(笑)。
 もう一つは服装。洋服でも、エジプト人に対して大抵が綺麗で新品。それから、ファッションセンスが垢抜けない(笑)。お母さんがイトーヨーカドーで買ってきたというか、良い服を着ていても、どこか服に「着られている」感じがあります。エジプト人はボロは着ていてももうちょっとお洒落です。
 ちなみに、彼もエジプト方言はまったく問題なく話せていました。
 今まで何人かの湾岸系アラブ人と話しましたが、必ずしもエジプトに長期滞在しているわけでもないのに、エジプト方言を巧みに操ります。
 もちろん、エジプト人から見たら「なんちゃってエジプト方言」なのでしょうが、わたしのレベルでは識別できません。
 エジプトは、アラブ世界の文化の発信地として勇名を馳せてきましたが、アーンミーヤの浸透力も相当なもののようです。大体、人口からして違いますからね。
 彼はいかにもお金持ちそうだったので、貧乏暮らしとしては一瞬グラッときたのですが(笑)、当然しばらくお喋りしてバイバイ。というか、そのTOSHIBAのラップトップよこせ。
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カラテとカラオケ posted by (C)ほじょこ

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