ストリート結婚式

 最近の勉強スケジュールは、平日(金・土以外)は昼間にF先生の授業、その後某図書館で自習、うち二日は友人が個人教授、お休みの金・土にS先生の授業を集約、という体制に落ち着いてきました。紆余曲折ありましたが、ルーチンがあるとやっぱり楽です。
 とにかく、図書館が素晴らしい。
 図書館というのはどこにあっても最高なものですが、日本の百倍騒々しいカイロでは、静寂と知的空気が余計に際立ちます。ここで知り合った人とは、ストリートのエジプト人とは違って中身のある会話ができるし(笑)、一人で静かに勉強していると、「このまま一生勉強していたい」という気持ちになります。
 喋るだけなら、普通に生活して道を歩いているだけでもイヤというほど機会はあるのですが、やっぱり「お勉強」の心地よさは格別です。
 ちなみに、日本の図書館では咳払い一つでも目立つ感じですが、ここでは普通にお喋りしています。ただし、声量は抑えていますし、騒ぐようなことはありません。終始怒鳴り声が止まない街を基準に考えると、十分静かで程よい静寂が保たれています。全然気になりません。
 ある程度決まった人間関係の中で暮らし、ご近所さんとも一通り顔見知りになると、気がつくと以前より喧嘩が少なくなりました。いや、今でも時々路上で口論になるのですが、顔が通っていればそうそう不躾なことはしてこないし、完全スルーすべき相手もいい加減識別できるようになったので、騒がしい街でも随分平和に暮らせるようになりました。
 脳みそ溶けてきて、「他人は基本的に、みんなわたしを肯定してくれている」という前提で生きています。アジアは一つ、八紘一宇なので、「シーニー」でもいいです。でも、三ヶ月もいるのに、毎日「ウェルカム!」って何十回も言ってくれるのはもういいです。
 F先生との授業は、先週ずっとフスハーだったので、今週は少しアーンミーヤ。彼女とはアーンミーヤや、新聞などの平易なフスハーを勉強している方が楽です。難しい詩文等については、S先生に語らせた方が延々と講釈してくれて面白いです。
 キャリアの違いか、込み入った内容の説明については、やはりS先生は抜きん出ていますが、アラブの男性らしく女性を過剰に守りリードしようとする性質が強く、頼りになる一方、正直ちょっと鬱陶しくもあります(笑)。F先生とホニャホニャ勉強している方が、肩は凝りません。
 彼女を「笑かしたろ」ということに全神経の80%くらいを使っています。
 エジプト人は、物音を真似するのに、非常に多くの擬音を口蓋をフル活用して作り出します。全員芸人じゃないのか、というくらい上手です。日本語とは桁違いに口蓋から喉まで使い尽くすアラビア語話者ならではなのかもしれません。
 ザグルータという、祝い事の席で女性が出す甲高い声が有名ですが、日常使うものでも「ひゅっとモノが落ちる音」「カチッとスイッチが入る音」みたいな声がとてもカッコよくて、一人で時々練習しています。
 路上結婚式の準備中らしい風景に出会う。

 エジプトでも、お金のある人は普通にホテルなどを借りて結婚式をやりますが、貧しい人がこうして道で結婚式をやっているのも、頻繁に見かけます。
 ここを通る直前に、電飾ギラギラのバイク軍団を見かけたので、同じ結婚式でしょう。こんな感じで、ド派手な車やバイクでホーンを鳴らしながら街を練り歩くの恒例です。
電飾バイク結婚式
電飾バイク結婚式 posted by (C)ほじょこ
 道でガンガンに音楽がかかっていると、踊り出さずにいるのが辛いくらいです。めちゃくちゃ楽しそうです。というか、飛び入りしても多分一緒に躍らせて貰えると思うのですが・・。
 こういう風景は、本当に羨ましいです。
 日本では道路はお上のもので、ちっともパブリックな空間ではありません。
 多分、高度成長期くらいまでは、日本ももう少し緩かったのではないかと思うのですが、今や蟻の這い出る隙間もないくらいシステムが成熟してしまって、死後硬直みたいに退屈です。何が不愉快って、権力がアレコレ口出してくるのはそれが彼らの仕事なので良いのですが、わざわざ通報するお上品なヤツが市民きどりで紛れ込んでいることです。
 結婚式でも何でも、ガンガン道でやったらいいじゃないですか。
 音楽もダンスも、道でやるから楽しいんです。
 結婚する時は、巨大スピーカー用意して道で宴会やって、新婚早々ウェディングドレスで連行されてみたいです。

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