以前に、サッカーU-20ワールドカップ(エジプト式だと「ワールドカップ・ユース」)のムハンマド・タラアト選手が、コカコーラのCMで、日本語で「コカコーラ」と書かれたTシャツを着ている、と話題にしました(元記事はこちら、動画あり)。
今日新聞で、このムハンマド・タラアト選手が、正にこのTシャツのせいで「イスラエルの犬」疑惑をかけられている、という凄いニュースを見つけました。

サッカーエジプト代表ムハンマド・タラアト選手にイスラエルの犬疑惑? posted by (C)ほじょこ
「ユース代表のスポンサー企業、エジプト代表のTシャツに、ヘブライ語でイスラエルのマークを載せる」。
記事によると、問題はムハンマド・タラアト選手の着ているTシャツに、イスラエル企業B.M.B社の名前がヘブライ語で書かれている、というとのこと。
この件についてタラアト選手に取材したところ、「Tシャツはスポンサー企業によるもので、個人的に選んだものではなく、スポンサー企業(コカコーラ)と代表組織の合意によるもの」とのこと。また、代表チームのマーケティング部長は「広告はスポンサー企業の責任によるもので、代表チームに責任はない」とコメント、代表チーム組織委員長も「スポンサー企業の要請によるもの」と言っています。
一体これのどこにヘブライ語があるのでしょうか。最初は細かい字のところにあるのかと思ったのですが、動画でも写真でも視認できません。ヘブライ語はまったく知らないのですが、アラビア語とは同じセム系でノリくらいはつかめるので「もしや」と思い「BMB」に相当する文字を拾ってみたら、次のようになりました。
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「コカ・コーラ」の「コカコ」が、この「BMB」という企業のヘブライ語表記だと勘違いされたようです。確かに似ています。
日本語はまったく読めず、ヘブライ語なら読める、という人が見たら、そういう風に受け取ってしまうのかもしれません。タラアト選手はとんだ災難ですが、この記事も突っ走りすぎでしょう。「コカ・コーラ」の「-ラ」の立場はどうなったのでしょう。
左派系の新聞の記事だったので、政府系の新聞に電話して一報入れたら、金一封くらい貰えるかもしれません(笑)。
ちなみに、タラアト選手が長髪であることも、こういう疑惑を持たれた一因のようです。エジプトで長髪の男性というのは、かなり突っ張った思想の持ち主だと思われたも仕方ないですし、以前から快く思っていない人たちがいたのでしょう。
でも、彼のおでこには、若いのにはっきりとした礼拝ダコがあり、信仰熱心な人であることは一目瞭然です。長髪でツッパったファッションでも、信仰心には事欠かない感じが、個人的にはすごく応援したくなるのですが、人を見かけで判断するクダラナイ奴らがエジプトにも多いようです。
百歩譲って本当にイスラエルの宣伝Tシャツを着てしまっていても、どう考えても彼個人には何の責任もない、と思っていたのですが、今日先生にこの記事の話題を振ったら、驚いたことに「いや、彼にも責任がある」と言われてしまいました。
「イスラエルと我々の間には、どこまで行っても心の中では問題がある。撮影の時にTシャツを見て着たのだから、着た時点で彼にも責任がある」とのことです。彼はヘブライ語も日本語も読めないと思うのですが・・。
日頃イスラエルを悪し様に罵っているわたしですら、この話題になった時のアラブ人の気迫には、ちょっとビビるものがあります。
「もちろん、イスラエルとの問題は政治的なものであり、宗教的なものではない。ユダヤ教、キリスト教とは、統合的متكاملな関係(お互いに支えあい完成するイメージ)にある。だが、残念なことに、政治的な問題が宗教的な面を被ってしまっている」「アメリカからユダヤ教徒の学生が来ても、普通の学生と変わらないし、歓迎する。また、イスラエル人でも受け入れはするし、彼または彼女個人は『敵』ではない。だがイスラエル人は仕事だけの関係だ。決して友達ではない」。
コカコーラについては、アメリカ消費文明の象徴だけあって、様々な陰謀説が尽きませんが、特にアラブ世界では、「ユダヤ系企業としてのコカコーラ」に対して、単に政治的というより、妄想に近い反感を抱いている人がいます。「コカコーラ」の英語文字を組み替えるとアッラーを誹謗する内容になる、とかのトンデモ説を大真面目に語る人もいます。
一部のトンデモ好きな人たちのものではなく、他の面では至って合理的に振舞う教養ある人物の口からこういう説が出てくると、問題の根深さを憂わないでいられません。
サッカーエジプト代表ムハンマド・タラアト選手にイスラエルの犬疑惑?
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