精神疾患法 法の待つ人生
エジプトにはおよそ700,000人の統合失調症患者がおり、人民議会が先の五月中旬に採択した精神病者保護法により、患者の二親等内の親族、警察官、地域のソーシャルワーカー、当該施設で勤務しておらず患者と近親関係のない精神医療専門家、二親等内の病院長のいずれか一名による病院への書面提出があれば、決定から二十四時間以内に担当官への報告のある限りにおいて、患者の意志に関わらず入院を強制できるようになった。これは同法第十四項による。
「第十五項の規定では、当人の意志に反する一週間以上の患者拘束は、精神医療地域会議の登録精神専門家二名による精神鑑定のある場合に限られる。これは以下のような同法第十九項と矛盾している。これは精神科医の権利を規定するもので、精神医療地域会議の同意のある場合六ヶ月間まで強制入院を延長できる、としている」。グローバル病院の精神医療専門家アムル・アブー=ハリール博士はこう語った。これにより、独立した精神鑑定なしに市民が六ヶ月間精神医療施設に拘束されることになるかもしれない。
「個人の権利のためのエジプトによる健康と差別問題」責任者のラギヤ・イル=ガルザーウィー博士は、こう明らかにする。「この法律は、措置入院を行う精神鑑定への対応の遅れについて、精神医療地域会議に対するいかなる規制も課していない」。イル=ガルザーウィーは、これらの会議が、監督・監視機関から単なる通知機関へと変わってしまうのでは、と危惧している。これは、彼女の考えでは、精神病者の権利保護の最も重要な保証の一つを脅かすものだ。
また、同法施行において、本人の意志に反する入院の担当官への報告が杜撰となることが危惧されている。この件に関する同法の条文は、警察官を煩わすかもしれなかったり、家族にいなくなって欲しいと思われているいかなる市民にも適応されかねないからだ。
精神医療専門家バスマ・アブドゥルアジーズ博士もまた、同法第十四項が、精神医療を専門としない医師に、患者の拘束と精神医療施設からの外出禁止を許していることに警鐘を鳴らしている。これは、患者が自己または他者に危害を及ぼすかもしれない緊急事態に患者への治療を強制するものだ。彼女の考えでは、精神病者の権利保護と法律濫用防止のために、これは精神医療専門医師の管轄とすべき、としている。
精神保険事務局長ナーセル・ルーザー博士は、措置入院手続きを専門医のみに限定しないのは、精神科医の不足のためだ、と言う。「80,000,000人の人口に1,000人の精神科医しかいないのだ」。
アムル・アブー=ハリール博士は、同法は正当な精神医療法に従っておらず、精神病患者が法を犯した際の、責任能力制限について、飢えをしのげない欠乏状態しか認めていないことを示し、こう語る。「現在根拠とされている法制は1956年の法律で、白痴とか知恵遅れといった、精神医療ではまったく用いられなくなった慣用表現が使われているものだ」。
エジプトの精神医療 5
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