イル=バラーダイー(エルバラダイ)氏の、エジプト大統領選への「条件付出馬」に関して、短いですがとても面白い記事がありました。
彼の「条件」とは、「公正な選挙が行われること」「独立系候補を認めること」等、「世襲」のための法制度が固められた現状にあっては、はっきり口にしなくても誰もが不可能とわかっているものです。つまり、彼の「条件付出馬」とは、それ自体が痛烈な政府批判になっているのですが、当然のことながら、政府国民民主党からは、様々な批判がぶつけられています。

イル=バラーダイー大統領 posted by (C)ほじょこ
イル=バラーダイー大統領
とうとうイル=バラーダイーが、暗黙のうちに、来る大統領選挙への不出馬を表明した。確かに、彼の口からはそう言っていない。ただ彼の知性と魂からそう言ったのだ。公正な選挙を望むことを理由に、はっきりと実現不可能と知りながら、選挙の実施法を改革することを条件とした時に。今や、問いはこうだ。どうして我々が、公正な選挙を行うというのか? この男は夢見ているのか、勘違いしているのか、野望を抱いているのか。重要なのは、彼が多くの条件で不可能を要求し、そこに最後の条件、つまり、ナイル川をアレキサンドリアからアスワーンに向けて流す、という条件を付け忘れたということで、誰もが彼が出馬しないということを確信している。興味深いのは、イル=バラーダイーの条件ではなく、各紙の編集長たちが行った彼への攻撃と、彼の条件および誰もが疑わないその尊敬すべき人間性への嘲笑だ。ここで、問いはこうなる。もしイル=バラーダイーが直接出てきて大統領選に出馬しない、と言っていたら、同じだけの中傷と詮索があっただろうか? 国際原子力機関のような国際機関で、華々しい役職に辿り着き、その任を終えた後で、彼が生まれ育ち、役立つ男として世界に送り出してくれた国の選挙に立候補することを考えた時、イル=バラーダイー氏は誤ったのだろうか。なぜ我々は、我々の象徴を中傷しようとするのか。なぜ我々は、我が国における、この世界的に尊敬される人物を生み出した好意をないがしろにしようとするのか。編集長の一人の主張が行ったように、彼をスウェーデン国籍に結びつけようとしたりするのか。エジプト人たちよ、君たちには驚かされる。少し違うかもしれないが、もしクフ王がもう一度生命を吹き込まれて、大統領選に出馬したとしたら、彼からエジプト国籍を引き剥がして、ピラミッドから放り出すのか? 諸兄よ、彼の言ったことが、単なる彼の望みであるなら、その望みが困難で実現に程遠いことは我々が皆知っていることなのだから、こんな大騒ぎは必要ないはずだ。彼は願い、我々は夢見、彼と彼の試みを誇りとし、アッラーにことを預け、助けを待つ。最後に、わたし自身はイル=バラーダイーの擁立に賛成していない。だがまた、庶民の名の下に語り、庶民は彼の課した条件を受け入れないと言う者たちの誰が出てくるのであれ、わたしには困難なことだ。最後の問いは、この兄弟に対する、おかしくて泣かせるものだ。あなたはいつから、庶民たちを気にかけるようになったのか? 誰が、庶民の名の下に語る資格をあなたに与えたのか? その地位には、選挙によって着いたのか、それとも当局による指名で? その当局は、彼ら庶民を味方せずにやって来たのだが。
翻訳の拙さを無粋な説明で補っておきます。
「どうして我々が、公正な選挙を行うというのか?」というのは勿論、そんなことは不可能、との意。
「編集長たち」と言われているのは、新聞の編集長のことですが、暗黙的に、イル=バラーダイーを批判している政府系新聞の編集者を指しています。「彼の言ったことがただの望みであるなら、そんな口やかましく騒ぎ立てる必要がどこにある?」という皮肉です。
「スウェーデン国籍」云々というのは、彼がスウェーデン国籍を持つ二重国籍者だ、という、政府系新聞による中傷のこと。イル=バラーダイーを生み出したのは、他ならぬ我らが祖国なのに、その祖国の名誉まで傷つけるのか、との意。
イル=バラーダイーの擁立に賛成しかねないながら、同時に「庶民の名の下に語る」者たちにはもっと賛成できない、と言っています。彼らは「国民はイル=バラーダイーの条件などのめない」と主張しているのですが、そう言っているのはもちろん、「国民」ではありません(笑)。
「あなたはいつから、庶民たちを気にかけるようになったのか?」。もちろん、今でも気にかけていない、という皮肉。
そして、選挙についてのイル=バラーダイーの発言を批判している者たちは、選挙でその責に着いた訳ではなく、皆政府の指名で「天下り」(?)して来ているだけ、ということです。
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