日本語のできるエジプト人というのは、いるところには結構います。
ウストゥルバラドや観光名所で片言の日本語を叫ぶエジプト人は掃いて捨てるほどいますが、あれはできるとは言わないので除外。
キチンと勉強している人はそれなりにいますし、数人はびっくりするくらい上手な人に会ったことがあります。
ただ、これらの人たちが皆日本に行ったことがあるかというと、そんなことはなくて、物凄いハイレベルの日本語を操る人でも、日本には行ったことがない、という人の方が多いと思います。
こういう人たちの日本語に出会うと、いつも奇妙な感覚を覚えます。
驚くほど日本語が上手なのに、文化的な空気が、エジプトそのままだからです。ぶっちゃけ、こういうタイプのエジプト人の日本語は、日本的基準だと「失礼」なのです。
エジプト基準なら、ちっとも失礼ではありません。彼らには彼らの礼節の基準があるのです。ですから、アラビア語で話している時はまったく気にならないのですが、日本語を話していると「ちょっと、それはないんじゃない?」と言いたくなる時があります。
ここはエジプトであって、何語で喋ろうが彼または彼女はエジプト人なのですから、エジプト式に物事を進めるのは当然であって、腹を立てるのは筋違いです。でも何か、ぬぐい切れない不快感があるのも、正直なところです。
どんな言語も文化的コンテクストと表裏一体なもので、日本語なら日本の生活様式、人間関係の構築方式、日本の「生活の空気」というものを知らなければ、文法的には完璧でも、運用として不適切な言動をしてしまう結果になります。
多分、留学等で現地に行って学ぶことのメリットというのは、この「空気」を知ることでしょう。新聞を読んだり基本的な会話をする程度ならどこでも学べるということは、多くの「日本語上手のエジプト人」が立証してくれています。
逆に「場のノリ」にうまくシンクロできれば、言語プロパーがそれほど達者でなくても切り抜けられるのですが、それを言ってしまうと学習上問題なので(笑)、目を瞑っておきます。
ただし、英語についてだけは、「現地メリット」みたいなものは完全無視して良いですし、無視すべきだと考えています。
なぜなら、英語というのは、現在ではアメリカ人やイギリス人と会話するためのものではなく、第三言語として運用される場面が圧倒的に多いものであり、かつそういう目的で学ばれているものだからです。
もちろん、「イギリス文学が大好き」で英語を勉強しているなら、話は違います。また、アメリカ人と商売するなら、アメリカ的バックグランドを知っておくのも、意味のあることでしょう。
でも、日本人と韓国人が、共通言語として英語を使う時、アメリカ文化なんか知っていたって、何の役にも立ちません。むしろ邪魔です。韓国について知っている方が遥かに重要ですし、一番大切なのは、日本のことを英語で話せることです。
こと英語について言えば、通じる範囲で「日本人英語」でも構わないと思いますし、アメリカやイギリスのことより、とにかく日本について勉強すべきでしょう。
って、この話は鈴木孝夫さんの『日本人はなぜ英語ができないか』の受け売りですが、まったく同感で常々感じていることなので、大して英語も上手じゃないのに厚かましくご意見させて頂きます(この本は非常に面白くのでお勧め!)。
司書さんのような仕事をしている、日本語のできるエジプト人女性と話しました。
彼女の日本語レベルはなかなか高いので、他の日本語学習者に時々質問されているのですが、それでもわからなくて、わたしに尋ねてくれたのです。
たまたま読んでいる文章で一箇所だけわからないところがあったので、教えた後で「ところでこれどういう意味?」とわたしも質問してしまいました。
「発音がとてもきれい」と言ってもらえて嬉しいです。いやほんと、発音には苦労していますので、お世辞でも何でも天にも昇るほど幸せです。
彼女とアラビア語で話している時は、いんちきエジプト人的な振る舞いや表情をしているのに、日本語になると、途端に「思い切り日本人」に戻るのが、自分でも面白いです。
日本語を話すエジプト人女性と会話すると、最初はちょっと「怖い」んですよね。なぜだろう、と考えると、彼女たちは日本人みたいにすぐ微笑まないからです。また、会話のトーンが、日本人の感覚からすると怒っているみたいに「強い」ので、その調子で日本語を話されると、この「強さ」にすっかり慣れているはずなのに、ちょっとビビってしまいます。
わたしも、普段は全然ニコニコしません。口調もデフォルト喧嘩腰です(笑)。スマイルを安売りして良いのは、日本の中だけです。あれは非常に危険なもので、気安くスマイルすると、付け込まれる隙を作るだけなので、むしろ笑わないように気をつけた方が良いくらいです。
でも、日本語になって尚且つスマイルがないと、ちょっとドキドキするんですよね。「日本人、気安く笑いすぎ」といつも思っているくせに、ちゃんと怖くなるから不思議です。
ある程度会話が進めば、エジプト人だってスマイルしてくれますから、そうなれば問題ないのですけれどね。
ここしばらく、体調を崩すやら不躾な言動を投げられまくるなど(いつもだけど)イヤなことが続いて、心が内向きになっていたのですが、彼女たちと話してちょっと元気になりました。

馬車とトゥクトゥク posted by (C)ほじょこ
全然関係ありませんが、この写真の左端に小さく映っている赤いシャツのガキは、この直後に瓶を投げつけてきました。捕捉する前に逃げられたので、見かけた方は殴っておいてください(笑)。
日本語を話すエジプト人、現地で学ぶメリット
エジプト留学雑記