エジプト人にとっての近隣諸国イメージ

 前から気になっていた「エジプト人にとっての、中東・北アフリカ諸国のイメージ」について、お喋りの中で聞き取りしています。
 イメージはあくまでイメージで、そんなステレオタイプなど当てはまらないことは当人たちも承知。日本人だって「韓国人は・・」というステレオタイプがあっても、全員その通りなんて思っていないでしょう。
 まず、アラブ・トルコ・ペルシャの三大民族について。
 トルコ人については、「高飛車」「支配しようとする」「美人」というイメージがあるようです。オスマン調時代のステレオタイプが文化的に続いているのでしょうか。
 一方、ペルシャ人については、何のイメージもないようです。「とても宗教的متدين」と言いますが、それはイランの現在の政治体制に由来するものでしょう。実際、エジプトで暮らしていると、トルコの影響は色々なところで目にしますが、ペルシャのイメージは全然ありません。「遠い国」という感じです。
 次に、アラブ諸国。
 モロッコやチュニジア、アルジェリアといったマグリブの国については、「開放的محرر」なイメージがあるようです。フランスの植民地支配が長かったので、ヨーロッパ色が強いのでしょうか。実際のところどうなのかは、行ったこともないのでわかりません。
 お隣のリビア、東隣のヨルダンについて尋ねましたが、「別に・・・」な反応。「道ですれ違ったらリビア人だとわかるか」と尋ねても「エジプト人じゃないけれどアラブ人、というくらいしかわからないと思う」とのこと。
 そもそも、リビアは地図で見るとエジプトと同じくらい大きいですが、人口は比較にならないほど少ないです。ヨルダンだって小さな国です。「リビア人」「ヨルダン人」の絶対数自体が多くないのです。ナイルの恵みがいかに偉大であるか、思い知らされます。
 シリアは「独裁国家」、ヨルダンは当然、欧米色の強い国。
 ヨルダンと言えば「美人」ですが、「外国のイメージになると、みんな『美人』と言うし、要するに外国人は全部美人だと男の人は思ってるんじゃない?」との鋭いコメントも頂戴できました。
 サウジアラビアは・・エジプトとは微妙な関係ですね。この辺りは、かなり政治的な発言になるので、仲良くなって第三者のいない状況でないと、気安く尋ねられません(以前、うっかり大勢人がいるところでガマールとアムル・ムーサーの話をしたら、相手の女性が引きつった顔で「みんなムバーラク大統領が好きです」と言ったのが印象的でした)。サウジアラビア人はとても「宗教的」だけれど、上からの強制という色彩が強く、そういう「法律のような宗教」にエジプト人は反感を抱くようです。わたしも同感です。
 イラクについて尋ねようとしたところで、逆に「日本人はイラクをどう思っているの?」と聞かれてしまいました。
 わたし個人については、イスラーム帝国全盛期の都バグダードは、死ぬまでに一度は訪れたい町ですが(今行く根性はナシ)、日本人一般にとっては「戦争」の一言でしょう。
 「イラクとイランは、日本語ではとても似ている。区別のできない人もいる。イラクはアラブで、イランはペルシャだということも、知らない人が多いのではないか」と言うと、びっくりしていました。
 日本では、つい「アラブ」とか「中東」とか一括りにしてしまいますし、パレスチナもイラク戦争も同じくアラブの大問題だ、と考えてしまいますが(実際そうなのですが)、エジプトでは、パレスチナへの意識が非常に強い一方、イラクについては、あまり話題にしたこともありません。
 新聞を眺めていても、パレスチナ関係の報道は毎日ありますが、イラクのニュースは多くありません。
 ちなみに、共にエジプトを支配した歴史を持つイギリスとフランスについては、イギリスのイメージが悪いのに対し、フランスは好印象です。
 「イギリスは長く支配し、多くのものを奪った。一方、フランスの支配は短く、与えてくれたものも多い」とのこと。
眠るロバと犬
眠るロバと犬 posted by (C)ほじょこ

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