アーンミーヤは「正書法が確立されていない」だけで、「書かれない」わけではありません。
アーンミーヤが書かれる例として、スーパーのレシートや携帯メールを挙げたことがありましたが、非常にわかりやすい例が新聞にありました。

アーンミーヤの書かれる例(新聞) posted by (C)ほじょこ
見出しの最後の部分に、大統領の言葉として、
ارمى ورا ضهرك
という言葉がカッコの中に入れられています。フスハーで書けば、
ارمي وراء ظهرك
です。
これは「過ぎたことは忘れな」といった意味の口語慣用表現で、フスハーで書いたらちょっと違和感があると思います。そのため、敢えて音に忠実にカギカッコに入れた直接話法で表現しているのでしょう。
同じ大統領の言葉でも、公式の演説なら最初からフスハーですし、アーンミーヤで表現されるということはまずありません。でも、このような口語的表現の場合は、親しみを表す方が大事なわけで、そちらを優先した表記になっているのでしょう。
関係ないですが、新聞というのは本当に便利なものです。
読んで暇つぶしと勉強になるし、「一緒に新聞読むごっこ」をして遊ぶこともできます。この「新聞読みごっこ」は、普通のエジプト人を即席教師に仕立て上げるに非常に有効です。
エジプト人は「アラビア語は簡単だ」とか「授業料をいくら払ってるんだ? 俺ならもっと安く教えてやる」「言葉は会話の中で自然に学ぶんだ」とか軽く言うのですが、子供じゃあるまいし、そんな自動的に言語が身に付くくらいなら苦労しません。大体、彼らだって読み書きは学校で習ったのです。実際、その辺のエジプト人が語学教師として役に立つことはまずありません。
でも、新聞があれば、とりあえず対象をフスハーにもってくることができて、「これはどういう意味?」とか質問もし易いです。というか、辞書や教科書を持ち歩くと重いので、出先で新聞を買って読みつつ、わからないところはその辺のエジプト人を辞書代わりに使う、という外道な学習法をよくやっています。おっちゃんたちが「ああでもない、こうでもない」と激論を始めたりするので、アーンミーヤの勉強にもなります(笑)。
暑ければウチワに、寒ければ防寒具になります。新聞の断熱効果については、ホームレスの利用方法を見れば一目瞭然でしょう。冷房の効きすぎたバスや電車に乗る時は、これで胸元を覆っているだけで大分暖かいです。
読んだあとはテーブルクロスにできるし(よくストリートカフェである利用法)、さらに「護身具」として役立ちます。
どういうことかというと、エジプトの新聞を小脇に抱えて歩いていると、ボッタクリやしつこいナンパに会う確率が減るのです。
東洋人の女が一人で歩いていると、様々な詐欺やからかいの格好の標的になるのですが、「新聞を持っている=アラビア語が読める=カイロに住んでいる?とにかく只者じゃない!」という連想が働くのか、何もない時よりグッと静けさを守ることができます。
新聞、素晴らしいです!
アーンミーヤが書かれる例(エジプトの新聞より)、新聞の「護身効果」
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