エジプシャン・ジュースの種類、血圧幻想、カイロの喧騒と砂埃

 ここ数日外出が多かったのと、昨日久々に山ほど宿題が出た上、翻訳速度がトロすぎるので、今日はひきこもってコツコツ自習と作業。
 今日のイフタールはこんな感じ。
トマトとナスと豆のスープ
 トマトとナスと豆のスープと、豆ごはん。なんか可哀想な絵ズラですね。嫁に行けないわけですね。あっはっはー。
 でもスープは結構おいしかったです。ごはんはうっかりしてちょっと焦げました。断食してたら何でもおいしいんだから、これでいいんです! 死なない死なない。
 いや、食べ物に関しては、油断していると本当に死ぬんじゃないか、という気がしてきたので、最近は専ら自炊専門になっています。グラタンと戦った時は、一晩高熱でのた打ち回っただけで薬もなしで復活しましたが、「食中毒をこじらせて脳炎で死亡」とか恐ろしい記述をいくつか見かけて「調子に乗ってるとシャレにならんかも」と遅ればせながら警戒レベルを上げてみました。
 食べ物と言えば、この間ジュース屋さんでよく売っているعرق سوسイルクスースという飲み物を初めて飲んだのですが、尋常ならぬゲテモノでした。ラマダーン中によく飲まれる「時期もの」飲料ですが、エジプト人には悪いですが、この世のものとは思えないほど不味かったです。
 エジプト人にとっても「美味しいジュース」というより、薬効を有難がるものらしく、血圧を下げる効果があると言います。でも、この「血圧を下げる」、何かというと出てくる効能で、エジプト人には「身体に良い=血圧を下げる」というイメージがあるんじゃないか、と疑いたくなるくらいです。日本における「血液サラサラ」的な幻想なのではないでしょうか。
 S先生は日本茶をまったく受け付けないそうで、「二回飲んだけど、あれはどうやっても飲めない」と語っていて、「それはわたしにとってのイルクスースと一緒だね」と笑いました。
 ジュース屋さんがよく扱っているのは、他にسوبياスービヤーという白いドリンク、تمر هنديタマル・ヒンディーという赤いドリンクがあって、この二つは(ちょっと甘すぎるけど)どっちもおいしいです。スービヤーは何から出来ているんだろう、と思って先生に尋ねたら「知らない」とのご返答。今度自分でジュース屋さんに聞いてみます。タマル・ヒンディーはタマルというくらいなのでナツメヤシから作ると思っていたら、別の植物だそうです。
 ジュース屋さんは、こんな感じに金属のお皿を鳴らしながら歩いています。

 ここは観光地なのでクラシックなスタイルで徒歩で歩いていますが、屋台や普通の定置店舗が一般的です。屋台でも同じようにお皿を鳴らしています。
 あのお皿の意味を知らないのですが、少なくとも現在では実際的目的があるようには見えないので、お豆腐屋さんの「プー」というラッパみたいに、職能シンボル的なものだと思います。
 同じく「練り歩く」系で、廃品回収みたいな車(自動車ではなく、自転車リアカーかロバリアカー)がよく街中を巡回しています。この業者の掛け声が何と言っているのか気になっていたのですが、今日質問したらبكياビキーヤーとのこと。トルコ語由来で古道具とかを意味するようです。
 授業の後、そのまま帰るのも寂しくて、近所を散歩したのですが、この辺りはとにかく喧騒と排ガスと砂埃だらけで、歩けば歩くほど身体を壊しそうです。
 近所だけれどあまり行ったことのなかったエリアに侵入したところ(顔の通っていない大衆的地区を歩くのは本当に「侵入」的で、パンダにされまくるのを覚悟しないといけない)、女性ばかりの人だかりができています。「何やってるの?」とその辺の人に尋ねたのですが、ラマダーンのスペシャル企画的なもので、何かが配られている、という物凄い大雑把なことしか理解できませんでした。IDを見せると何か貰えるとか早口でまくし立てられたのですが、相変わらず高速アーンミーヤに着いていけません(アーンミーヤでゆっくり喋ってくれる人もあまりいませんが・・・)。
 道行く人々から話しかけられまくりますが、そのうち一人の女性に「レバノン人?」と言われて超ご機嫌。
 どう考えてもレバノン人には見えないと思うのですが、レバノン人と言えば美人の象徴なので、「うへへー」と都合よく取っておきます。
 それにしても、本当に砂埃がひどいです。
 カイロについて、現時点でも尚「なんとかならんの」と思うのは、交通秩序と砂埃です。
 このうち、交通秩序は人間の問題ですし、エジプト人自身も「なんとかせにゃならん」と感じているらしいので、百年くらい経てば多少改善しているかもしれません。
 砂埃はどうしようもないですが、排ガス由来が相当多いように感じるので、日本が気前良くクリーン技術などを提供すれば、これまた百年くらい経てばいくらかマシになっているかもしれません。
 オペラハウスなんか作るより(カイロのオペラハウスは日本政府の援助による)、排ガス規制を手伝う方がエジプト人にずっと喜ばれると思いますけれどね。オペラハウスも日本のゼネコンが請け負うだけですし、クリーン技術でも同様に「紐付き」になるんでしょうから、どうせなら多少なりとも一般庶民が恩恵に被れるところでお金を使って欲しいです。
 ただ、砂埃というのは、道路が舗装されているかどうかで全然違います。日本では舗装されていない道路の方が珍しいし、仮に砂利道や泥道でも、湿気が多いので、こちらのように埃が舞い上がることはないでしょう。道路状態の悪い地区を歩くと、砂漠の砂からゴミから排ガスから、色んなものが混じったすごく身体に悪そうな埃が煙幕のように立ち込めているので、ちょっと歩くだけですぐ煤だらけになります。舗装って素晴らしいです。
 そう言えば、今日の授業中に先生が「土地には二種類しかない。لأرض الزراعيとالأرض الصحراويだ(農業の地と砂漠の地)」と仰っていたのですが、砂漠でなければ「アルド・ジラーイー」らしいです。その辺の砂の吹き溜まりを指して「ジラーイー」と言っていたので、とにかく泥っぽくなっているだけで、農業のできる豊かな地、という括りになるようです。
 そう考えると、水資源に恵まれ緑豊かな日本が、何で現在のように低い食料自給率に留まっているのか、不思議に思えてきます。肉をやめましょう、肉を! 肉さえ食べなければ、相当の貧困を地上から放逐できる、と少なくともわたしは信じていますし、日本の食糧自給率だってグッと上がるでしょう。アラブのような根っからの肉食文化圏はともかく、元々肉なんてほとんど食べなかったはずの日本人が牛丼なんか食べてるのは、どうかしています。
 あんまりネタがないので、喧騒風景の動画を貼り付けておきます。
 動画で見ると「全然こんなもんじゃない! ちっとも伝わってない!」と感じるのですが、多分、キツさの真の源が、騒音よりも空気の汚染にあるからでしょう。
 念のためですが、カイロのすべてが砂埃だらけというわけではありません。綺麗なところは綺麗だし、もっと汚いところも沢山あります。
 この動画は夜のトゥクトゥクのド派手ぶりを伝えたくて撮ったのですが、本当にサーベルタイガー状態のトゥクトゥクは映っていませんね。一台長い羽根付きアンテナみたいのがあるトゥクトゥクが映っていますが、あれも意味不明ですね。アンテナではないと思うし、田舎の暴走族の空力性能完全無視した変なカウルみたいなのとか、クジャクのディスプレイとかと一緒だと思います。

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