タンヌーラ(スーフィーダンス)、女性専用車両、エジプトの焼き芋

 タンヌーラ(スーフィーダンス)を見てきました。
 タンヌーラは本来スーフィーの修行として行われていた旋舞で、ガーマ・アズハルそばのスルタン・ゴーリーの隊商宿で、水曜と土曜の週に二回、無料で見ることができます。
 せっかくなのでイスラーム地区のイフタール風景を眺めようと、悪趣味な考えでマグリブ前に近所をぶらつく。ズヴェーラ門からムイッズ通りを北上している辺りでマグリブとなり、通りでは道行く人にタマル(ナツメヤシ)を配ったり、通りを埋め尽くすように並べられたテーブルでみんながイフタールを摂る風景が眺められました。
 タンヌーラの開始時刻は20:00と聞いていたので、まだ時間があります。ガーマ・アズハルやガーマ・ホセイン付近のマクハーでかつ女が入れるようなところは、露骨に観光客相手で、いかにもぼったくられそうで気が進まなかったのですが、暇なので適当な店に入ってシーシャを吹かしながらお茶を飲みつつ勉強。
 予想通り25ポンドもふっかけられる。最初30ポンドとか言うので、例によってプリプリしながらどれがいくらか一々問い詰めて、それでも25ポンドより引きませんでした。覚悟していたとはいえ、ひどい商売です。まぁ、お茶はおいしかったですが。
 スルタン・ゴーリーの隊商宿のタンヌーラ会場入り口は、ちょっとわかりにくい場所。あらかじめ地図で確認してから行った方が良いです。狭い路地で、ちょうど向かいにゴミが堆積していて、待っている間かなり臭かったです(笑)。
 20:00だと思っていたら、21:00開始だと係員が言います。ラマダーン中は21:00開始のようです。がっつりイフタール食べた直後にクルクル回ったら、気持ち悪くなるからでしょうか(笑)。
 並んでいるのは欧米系を中心とした外国人ばかり。と思っていたら、開場少し前に、エジプト人の小学生の団体さんが。社会科見学だか何だかわかりませんが、先生に引率されたちびっこたちが大挙して押し寄せてきます。「これはエライ時に来てしまった」と恐れおののきます。
 列に並ぶなどというお上品なことはなさらないエジプト人。まして小学生の団体ともなれば、大混乱必須と思ったのですが、さすがは先生もプロ。見事にちびっこどもを操って、まず一般客から順番に入場できました。
 会場内の右側が小学生団体、左側が一般客、とうまく住み分けして、席についていきます。立ち見も出るぎゅうぎゅうの超満員でした。
 いよいよショーの開始。
 90分は長いかな、と思っていたのですが、まったく長さを感じさせません。要は音楽に合わせておじさんがクルクル回っているだけなのですが(失礼!)、生で見ると相当迫力があり、全然退屈しませんでした(ビデオ持込禁止ですがこちらの他web上に多数動画あり)。
タンヌーラ2
タンヌーラ2 posted by (C)ほじょこ
タンヌーラ4
タンヌーラ4 posted by (C)ほじょこ
タンヌーラ6
タンヌーラ6 posted by (C)ほじょこ
タンヌーラ7
タンヌーラ7 posted by (C)ほじょこ
 回転もさることながら、音楽が非常にかっこいいです。
 スーフィーのダンスと言いますが、現在の興行形態は世俗的というか観光化していますし、結構コミカルな場面もあります。明らかにウケを狙っている部分もあり、気楽に「おぉー回る回る!」と楽しんで大丈夫です。観客も大盛り上がりでした。
 料金も無料ですし、観光で来られたら見て帰って損はありません。
 メトロのアタバ駅に向かって帰る途中、焼き芋を買う。
 前にも一度だけ見たことがあったのですが(同じ屋台かも)、色々な屋台がある中、焼き芋は珍しいので試しに買ってみました。2ポンド。なんとなく「本当は1ポンドなんじゃないのか」という気がするのですが、他に買ったことがないので相場がわかりません。
 焼き芋は焼き芋ですが、日本のサツマイモとは種類が違います。サツマイモとカボチャの中間のような味がします。
 焼き加減は、日本の焼き芋基準からするとちょっと柔らかくなりすぎていますが、こういうものなのかもしれません。
 メトロの中で、女性専用車両に乗っている男性と女性の口論に遭遇。
 この場面には非常によく出会います。日本で女性専用車両にうっかり乗りそうな男性がいても、注意するのは駅員です。でも、こちらにはそんな駅員はいなくて、代わりにおばちゃんが注意します。
 指摘されると、大抵は「うっかりしていた」という風に車両を移るのですが、逆に色々屁理屈をこねて動かない男性もいます。これも日本ではあり得ない状況です。
 今日も長い顎鬚を蓄えた男性が堂々と椅子に座ったまま、おばちゃんの攻撃に対して「神はまず男を作り、それから・・」とかスケール大きすぎる反論を試みていて、そうする横から普通の女子大生みたいなのに「いやでもここ女性専用車両だし」とかツッコまれていて、面白い風景になっていました。
 これだけ書くと、ケンケンした議論を想像されそうですが、さんざん声を張り上げて言い合っている割に、そんなに怒っているわけでもなく(そう、これが別に怒っていないというのを理解するのにとても時間がかかった!)、周囲もクスクス笑ったり、男性の屁理屈に若い男性が「そうだ!」とか合いの手入れたり(って、コイツも女性専用車両に乗っている)、この男性の隣に同じくどーんと座っていながらなぜか非難されていないおっちゃんを指差して「なぜわたしだけ言われて、コイツは放っておくんだ?」とか超基本に戻ったりしていて、ほのぼのしたものです。
 帰宅してシャワーを浴びて、最近の定番超手抜き料理「鍋で炊いた豆キノコご飯とテキトーサラダ」を作っていたら、ドアをガンガンたたく音が。
 覗き穴から見ると、大家さんのファトマと娘のタスニームです。油断しきってお風呂上りに素っ裸で料理していたので(笑)、慌てて服を着て「ハイハイハーイ」とドアを開けます。
 掃除機を持ってきてくれました。家賃全額支払ってから掃除機と洗濯機を買う(エアコンも新調すると言っていましたが、季節的に必要ないし不明)、という話で、「どうせ二三週間待たされるんだろうな」と思っていたら、本当にすぐ持ってきてくれました。うちの大家さんはめっちゃいい人です! 全エジプト人に見習って欲しいです!
 掃除機は、大家さんの使ってないものか、中古を買ってきたのか、とにかくオンボロですが、問題なく動作します。「使い方わかる?」と聞いてくるのですが、掃除機はSANYO製品。「これ日本製だよ」と笑いながら、自分で組み立てました。日本ではちょっとお目にかかれない古い型のものですが、動けば問題ないです。というより、こういう古いものを修理しながら使っているエジプト人の方が、日本製品をずっと愛してくれていると思います(「中国製は安いけれど壊れたら直せない、日本製は高いけど直して使える」と色々な人に何度も言われました)。
 洗濯機ももうすぐ用意してくれ、衛星テレビも設置してくれるとのことです。衛星放送なんて願ってもないことで、感激です。ファトマの台詞はほぼ100%聞き取れるのですが、彼女はいつもわたしが理解しているか何度も何度も確認します。「receiverを設置する、receiverわかる?(レシーバーはそのままアーンミーヤになっている)」と聞いてくるので、「わかってますよ」を表現しようとしているうちに、なぜか「人工衛星」という単語が口をついて出て、二人で「カマル・シナーイー、カマル・シナーイー!」とか変な会話していました。
 おまけに、ホテルでもないのに、シーツと枕カバーを交換してくれます。部屋が散らかりまくっていて「全然片付いてない、ごめん」と言うと、二人が「アーディーアーディー」と言います。この「アーディー」の使い方は、日本語の「全然ふつうふつう」みたいなノリと一緒で、まんまعاديで同じことが表現できるのが面白いです。単にعاديだけ言えばいいので、外人にも親切な表現です。なんだか「お互い様」的な優しさと心地よい緩さが感じられる言い回しで、わたしは大好きです。
 二人が「お母さんの写真見せて」と言います。前に「日本の携帯に入っているけど、部屋に置いてある」と言ったのを、覚えていてくれたのです。
 写真を見せると、タスニームが日本語で「お母さん、かわいい」と言います。二つの超重要単語で完璧な文になっています。「お母さんに似てるね」と言われてうれしくなります。わたしも日本語で「お母さんタスニーム、かわいい」と言うと、意図が伝わったようでファトマが「ありがとう」と言って楽しかったです(「お母さんタスニーム」だと「タスニームのお母さん」を示すのにアラビア語的に自然な語順。もちろん日本語としては間違い)。

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