一般に、エジプト人は猫は好きでも犬は嫌いです。
これには宗教的なバックグラウンドがり、預言者ムハンマド様が猫好きだったのに対し、犬の口には良くないものが含まれている、という思想があるからです。
犬を飼っている人もいますが、極少数で、「金持ちの道楽」的ポジションです。飼う場合はマルチーズのような小さな犬に限られる、と聞いていましたが、何度か大きな犬を飼っている人も見かけました。
実際のところどうなのだろう、と眺めていると、まず、野良犬・野良猫が日本とは比較にならないほど多いです。野良犬はそもそも今の日本ではまず見かけませんが、野良猫の数も全然違います。
野良犬というと、大変危険なように思いますが、ほとんどの場合は何の害もありません。わたしは一度だけ追いかけられたことがあるのでちょっと怖いですが、あっちもこのクソ暑いのに人間なんか走って追いかけても何の得にもならないし、大抵木陰で寝そべっているだけです。ストリートチルドレンの方が余程厄介です(笑)。
こうした動物が生活できるということは、ゴミの回収システムが整備されていない、ということですが、基本的にゴミというのは「その場処理」が一番合理的なのであって、おそらく都市全体のエネルギー効率という点では、野良犬・野良猫はいた方がプラスです。紙の上の計算で人間的なもの以外をすべて排除してしまうと、総じて見た時に非合理になるものです。東京ではカラスを追い出そうとしているらしいですが、ガソリンを使って自動車でゴミを集め、さらに石油をかけてゴミを燃やすくらいなら、少しでもカラスに「生体処理」してもらう方が、エネルギー消費は少なくて済んでいるはずです。
それはともかく、実際の人々を眺めていると、猫は愛されていることが多いものの、日本のように「猫可愛がり」されているのは時々見かける程度で、基本は野良猫がゴミを漁っているだけです。飲食店などでは、蝿と同じレベルで追い払われたり棒で叩かれたりしています。
それに対し、犬が棒で殴られている、というのは見たことがありません。これは別に、エジプト人が実は犬好きだからではなく、単に犬は手出しするとこちらがやられるので、お互いに見てみぬふりをしているだけでしょう。「目を合わせたらアカン」存在です。
わたしは犬好きなので、「エジプト人は犬が嫌い」(というより、ムスリム全般)というのが悲しかったのですが、確かに犬というのは、よく訓練しなければ危険な動物です。猫や鳥は、別に放っておいても害はありませんが、犬は社会化されて初めて仲良しになれるのであって、元をたどれば狼です。馬やロバ、羊やヤギは草食動物で、こちらでは貴重な家畜ですが、そうでなくても人間を襲うことはありません。犬というのは、仲良くなるのに敷居の高い動物なのだなぁ、と実感します。
わたしの住んでいるアパートには鳥を飼っている人がいて、一日中小鳥の囀りが聞こえます。この部屋自体、元の住人は鳥好きだったようで、鳥かごの残骸が残っています。
更に、外壁のくぼみに鳩の巣があって、わたしの部屋からよく見えるところで、鳩一家が暮らしています。鳩の穴は、意外と奥が深いらしく、一羽だけ入り口にとまっていると思ったら、奥の方から別の鳩がひょこっと出てきたりして面白いです。
これだけの大都会なのに、動物があちこちにいるのは、ケモノ好きとしては幸せです。気候が非常に乾燥しているため、特に不衛生ということもないのでしょう。
蝿が多いのは勘弁して欲しいですが、もう慣れました。人間の体でも食べ物でも、多少蝿がとまっていたくらいで何も起こりませんよ。余裕で食べられます。路上で寝ているおじいちゃんが、蝿だらけになっていることもよくありますし。まぁでも、やっぱり蝿はいない方がいいですけれどね・・・。

アレキサンドリア 本の上で寝る猫 posted by (C)ほじょこ
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