二週間前によくわからない理由で頓挫したアレキサンドリア(イスカンダリーヤ)行き。「約束はすべて信用できない」ということで、一人で行ってきました。いやまぁ、単に一人で行動するのが一番楽で好きなだけですが。
朝7時の電車でラムスィースを出発。
この時、鉄道の職員らしき男性がわたしの切符を見て、頼みもしないのに「こっちだ」と案内してくれ、一方的にバクシーシを要求してきたのですが、もちろん払いませんでした。
席についてみると、既に座っている人がいます。「おかしいな」と思っていると、丁度職員が通りかかったので声をかけます。先客とわたしの切符をマジマジと眺めますが、ことごとく記述が一緒です。先客は知識人っぽい快活な男性だったので、「一緒に座る?」とか冗談を言いながら、よくよく切符を見てみると、数字の「4」(わたしの切符はインド数字ではなくアラビア数字=算用数字で印刷されていた)がかすれて「1」に見えていた、というオチでした。間違った車両に案内したさっきのオッサンにチップを払わないで、本当に良かったです。
二等の35ポンドの席でしたが、十分快適。冷房が効き過ぎているので、苦手な人は羽織るものを用意した方が良いです。
しばらく走ると車窓に田園風景が広がり、幸せ一杯な気持ちになります。「ハトの塔」(ハトを飼育する塔のような小屋)もいくつか見られました。
通過した街で、ジャーミゥがすごくカッコイイところがありました。多分ダマンフールدمنهورだと思います。
3時間弱ほどで念願のアレキサンドリア到着。
駅を降りた第一印象は「涼しい」そして「綺麗!」。話には聞いていたものの、アレキサンドリアはカイロと違って、道がすごく綺麗です。日本のような雰囲気とは全然違いますし、それなりにボコボコのところや路上駐車の酷いところはありますが、ヨーロッパの街にひけを取らない情緒があります。これだけでアレキサンドリアが大好きになりました。
この日一日行動した後でも、素晴らしい場所、という印象は変わりません。エジプトに来られた方は、絶対一日か二日はアレキサンドリアに使うべきです。あと、タクシーの柄がカイロと違って、ちょっと面白かったです。

アレキサンドリア マスル駅 posted by (C)ほじょこ

アレキサンドリアの通り posted by (C)ほじょこ
特に「ここ」というお目当てがあるわけでもなかったので、とりあえずマスル駅近くのローマ円形劇場へ歩きます。ラマダーンの飾りが素敵です。

アレキサンドリアのラマダーン飾り posted by (C)ほじょこ
ローマ円形劇場は入場料15ポンドみたいですが、セコイので中には入りませんでした。

アレキサンドリア ローマ円形劇場 posted by (C)ほじょこ
アレキサンドリア名物トラム。「ヨーロッパみたいで可愛い♪」イメージですが、以前にネット上で知り合ったアレキサンドリア人によると「すげー遅くてしょっちゅう事故してて、極力乗りたくない」そうです(後で実際に乗りました)。

アレキサンドリア トラムのある風景 posted by (C)ほじょこ
最大の目的は「散歩」なので、そのままブラブラ歩いてアレキサンドリア国立博物館(イル・マトハフ・イスカンダリーヤ・アウミー)を目指します。マスル駅からだと1キロくらいだと思います。
外人非学生だけ30ポンド(エジプト人タダ)のところに100ポンド札を出したら「小銭がない」と断られます。よくあることですが、受付の女の態度が気に食わなかった上、あんまり博物館の類に興味がない、というかカイロに一ヶ月以上いて考古学博物館にも行っていないくらいなので、ここも入りませんでした! 我ながらひどい。

アレキサンドリア国立博物館 posted by (C)ほじょこ
また歩いて超有名なアレキサンドリア図書館(マクタバ・イル・イスカンダリーヤ)へ。この建物は、本当にカッコイイです。遺跡系にそれほど興味がなく、現代建築が好きな人は、絶対見てみるべきです。貧富の差を差し置いてこんなところにお金を使っていいのか、とツッコミたくなるくらいの、お金のかけ方です。

アレキサンドリア図書館 posted by (C)ほじょこ
図書館の前は海。海、海です! 考えてみると、地中海を見たのは生まれて初めてでした。

アレキサンドリア 図書館前の海 posted by (C)ほじょこ
チケット売り場は例によってカオスで、機械が壊れたとかいって最初に並んでいた列から別の列に移された上、「横入りするな」とか「こっちが前から並んでたんだ」とかもめまくっていたのですが、何故か片言の日本語を話す子連れの若い女性が助けてくれて、「この人が先に並んでた」と守ってくれました。何故日本語が話せるのかわかりませんが、ありがとうございます。明らかにキリスト教徒の美人さんでした。
ちなみに、わたしの前に並んでいた女が「わたしは断食してるんだから」とかわめいていたのですが、断食くらいわたしでもしているし、そんなもんみんな好きで勝手にやってるんだから、何でそれで優先されるのかサッパリわかりません。
バッグを預け(カメラは持ち込めます)、やっと中へ。
ここは凄いです! 観光名所に今ひとつ愛のないワタクシですが、ブックフェチにはたまらないおとぎの世界です。開架の図書はちょっとお粗末なのですが、本に囲まれる幸せをこれほどうまく表現した場所もあまりないでしょう。

アレキサンドリア図書館 内部 posted by (C)ほじょこ

アレキサンドリア図書館 書架 posted by (C)ほじょこ
図書館を出て、カーイトゥベーイの要塞(アルアト・カーイトゥベーイ)へ。一番暑い時間に3キロくらいの距離ですが、歩きたいので歩きます。
大した距離じゃないのに途中でフラフラしてきて、今までの経験で「これはヤバいな」と思い、マクハーでアシール・ライムーン(レモンジュース)砂糖抜きを飲む。断食が破れてしまいました。旅行中は断食しないでいいはずだし、勘弁してもらいましょう。というか、それを行ったらカイロだって滞在中なだけだから、どの辺から「旅行」なのか気になります。
この日の日中はこのアシールだけでしたが、普通のムスリムはちょっとでも飲食してしまうと「もう断食無効だから」とガンガン食べ始めます。「できるだけのことはする」という発想はないようです。
お散歩続行すると、ガーマ・アブル・アッバースを通りがかる。

ガーマ・アブル・アッバース posted by (C)ほじょこ
これがかなりかっこいジャーミゥで、「すごーい」とか声に出して写真を撮りまくっていたら「中に入ったらいい」と案内してくれます。非ムスリム扱いでバクシーシ必須ですが、女子部屋の方に入れてもらいました(ジャーミゥやマスジドは、必ず男女別になっていて、普通は横の勝手口みたいなところが女子入り口になっている)。
礼拝している人、クルアーンを読んでいる人、単に寝てる人、色々です。ジャーミゥやマスジドのこの雰囲気は、もっと日本で知られて良いと思います。ほんと、礼拝している人がいる横で普通に寝てますから。そういうの、全然アリですから、堅苦いもんじゃないし、他人のことにとやかく言うものじゃないです。
お母さんが礼拝している横で外人(わたし)を珍しがる子供がはしゃぎまくっていて、「ほら、礼拝しているのに邪魔したらあかんやん」とツッコんでいました。
涼しくて気持ちいいので、わたしもムスハフを出してブツブツ読んでみます。他の人みたいにスムーズには読めません。幼児レベルです。そんなことをしているうちに、昨夜ほとんど寝ていなかったせいか、ついわたしも居眠りしてしまいました。
居眠りで体力回復し、トコトコ歩いてカーイトゥベーイの要塞に到着。

カーイトゥベーイの要塞 posted by (C)ほじょこ
ここもすごい!ってそればっかり書いていますが、この要塞のかっちょ良さは、遠くから見てもすぐわかります。むしろ、遠景の方が浮き立って輝いています(岬の突端なのですぐわかる)。世界七不思議のファロス灯台跡に15世紀にマムルーク朝のスルターンが建設した要塞です。
まったく日差しを遮るものがなく、ものすごい紫外線ダメージですが、要塞の中に入るとひんやり涼しいです。
これもイスラーム文明の遺産の一つですが、当たり前ですがとても地中海文明的な印象です。イスラームというとアラビア半島の砂漠のイメージが強いですが、そもそもイスラームは街の商人社会で生まれたものだし、最盛期はイベリア半島までイスラーム圏内だったわけで、現在の世界最大のムスリム国はインドネシアです。イスラーム、けっこう海。
カーイトゥベーイの要塞を出たところで、結構くたびれていたし「どうしたものかなぁ」とぼんやりします。タクシーが次々声をかけてきますが、乗る気はゼロです。ポンペイの柱を見に行こうか迷っていたら、マイクロバスが来たので「どこ行き?」と聞いてみました。
威勢良く地名を答えてくれますが、そんなこと言われても、そもそもアレキサンドリアの地名を全然知りません。面倒くさいのでとりあえず乗ってみると(常に行き当たりばったり)、ものすごい勢いで湾岸を飛ばしていきます。
この時点で目的地という考え方は捨てて、1ポンド25ピアストル(約25円)で湾岸ドライブを楽しむ、ということに切り替えました。途中でどんどん乗客が入れ替わり、あれよあれよという間に、かなり遠くまで連れていかれてしまいます。海沿いに走っているのがせめてもの救いですが、不安になってきたので、女の子が一人降りた時に一緒に降りました。
どこだかさっぱりわからなかったのですが、テキトーに歩いていたらトラムの線路があります。近くの駅はラムスィース(ラムスィースという駅は複数あるのですが、細かいところは忘れました)というところで、とりあえずトラムに乗ってラムル駅(海沿いの観光拠点)まで戻ることにしました。
トラムはなかなか来ないし、マグリブが近く帰宅ラッシュだったこともあり、噂以上の遅さです。でも、女性専用車両でうまく座ることができたので、車窓の風景を眺めながらトロトロ走行を楽しみました。25ピアストル(約5円)でした。
ラムル駅に着いた時にはイフタールも近かったので、「地球の歩き方」で見た(素人)マタァム・イッサマク・シャアバーンという店に行ってみることにします。場所がわかりにくく大衆価格、という記述だったのですが、予想通り地元民中心のお店です。

マタァム・イッサマク・シャアバーン posted by (C)ほじょこ
ラマダーン中のせいか、路上に並べられたすべてのテーブルにサラダとタヒーナがもう置いてあります。どういうシステムかわからずオロオロしていたのですが、魚を選んで調理法を指定し待つ、という仕組みでした。この注文がかなりテキパキやらないと怒られる雰囲気、というか怒られたので(笑)、高い寿司屋に入る勢いで気合を入れていきましょう。イフタール前の大忙し状態だったので、特にテンパっていました。
なんだかよくわかんない魚を「これマシュウィーにして」と頼んで、マグリブを待ちます。わたし以外は全員地元民(少なくともエジプト人)で、外人でしかも女一人、というのはかなり変な客です。満席状態なので、隅っこの方にちっこいテーブルを出されて「ここに座れ」と指定されます。なぜかわたしのところにはエーシ(パン)がなかったのですが、別になくてもいいので文句言いませんでした。
食べ物を狙う猫と蝿を払いながら、日暮れを待ちます。ちなみに、猫はどこにいっても沢山いるのですが、エジプト人は蝿と同じくらいの勢いで猫を追い払います。子供が棒で殴っているのもよく見ます。
ついにアザーン。アザーンに続いてファーティハが読まれ、さらにイフラースなどいくつかのスーラが読まれるのですが、みんなアザーンが終わった時点で食べ始めています。
わたしは食事前にファーティハを読む習慣がある(個人的な習慣で、別にイスラーム的ではない)ので、なんとなく一緒に読んでいたのですが、みんなアザーン後のドゥアーもしないで速攻食べています。これくらいでいいと思います。
隣の席の子供一人が、アザーンやファーティハを真似して大きな声で叫んでいたのが楽しかったです。アイツは仲間です(精神年齢的に)。
どーんとデッカイお魚を平らげ、35ポンド(約700円)。GAD(あちこちにある庶民系マタァム兼ファストフード)なんかより安いです。ロズ(ご飯)を頼んだはずが最後まで出てこなかったので、もしかするとその値段も含まれているのかもしれませんが、どの道もう入りませんでした。
伝票を見たのですが、解読不能です。アラビア語がどうとかいう問題ではなく、この手の店の伝票は日本語でも読めないことが多いです。
ともあれ、このお店はかなりお勧め! お洒落な雰囲気で食事したい方には向きませんが、猫と蝿と戦いながら路上でがっつり食べたい、という方は絶対満足です。当たり前ですが、洒落たレストランではエジプトだからってこんな値段では食事できません。
トラムの走っているイッ・サッイド・イル・アッワル通りを歩いていると、また交通事故の瞬間に遭遇。路面電車の線路上で三重玉突き衝突でした。運転の無秩序ぶりは「カイロよりは少しマシ」程度です。

夜のアレキサンドリア posted by (C)ほじょこ
列車の時間まで少し時間があったので、イフタール後のお祭りムードの街を歩く。
服を見て何件か回っていて、一つのお店で安いワンピを買ってしまう。このお店の女の子が感じが良く、きゃぁきゃぁ構ってくれたので楽しかったです。店員さん同士でヒジャーブの下の髪の毛をひっぱったりして、女子中学生ノリです。
ここに限らず、エジプトのお店は大体やたら店員さんが多いです。それだけ人件費が安く、人間だけはいくらでもいる、ということでしょう。前に入ったマタァムでは、「お手洗いの前でトイレットペーパーを切って渡す」係の少年がいました(中においておくと使われすぎるからか)。

夜のアレキサンドリア2 posted by (C)ほじょこ
21時の電車でカイロへ戻る。
一日しか滞在しませんでしたが、アレキサンドリアは本当に良いところです。
まず、最初に書いたように、カイロよりずっと街が綺麗。「ゴミが落ちていない」と言ったら嘘になりますが、カイロのようなあちこちで腐敗物が堆積しているようなことはないし、道路の舗装も綺麗です。
交通マナーは、日本とは到底比べられませんが、カイロよりはマシだと思います。クラクションの鳴らし方も、カイロよりは大人しいです。
そして何より、シーニー兄ちゃんやナンパが圧倒的に少ないです。「外人慣れ」ということでは、カイロだって同じだと思うので、何に起因するのかよくわかりませんが、わたしの経験した範囲で、アレキサンドリアの人々はカイロよりはグッと品が良いです。
特に最後に入った服屋さんは、外人相手の商売ではないせいか、素朴に「珍しい客」を楽しんでくれていたようで、オモチャにされすぎることもなく、好印象でした。
ちなみに、このお店に入る前に、別の服屋さんでさんざん迷って買わなかったのですが、ここのオジサンもすごく礼儀正しくて素敵でした。
欠点としては、みんなデフォルト英語で話しかけてくることでしょうか。
カイロもアレキサンドリアも観光都市で、絶対的な「外人数」ではカイロの方が絶対多いでしょうが、街の規模に対し観光の占める割合はアレキサンドリアの方が上、ということなのかもしれません。マリンスポーツの楽しむ場所でもあるので、白人たちの奔放さに慣れていて、東洋人ごとき今更なんとも思わないのかもしれません。
とにかくアレキサンドリア素晴らしいです! 魚もおいしくて夢の世界! 住みたいです!

アレキサンドリア ムスハフを読む人 posted by (C)ほじょこ
イスカンダリーヤ(アレキサンドリア)へ
アレキサンドリアの旅