朝食抜き。ダラダラ勉強していたら、Sさんから電話がかかってきて、タラアト・ハルブへ。一時間くらいシーシャを吹かしてぼんやりお茶する。
行きはバス、帰りはメトロだったけれど、宿がメトロの駅から遠くて日差しが辛いです。
またへルビーさんのターンメイヤを買うけれど、なんかお疲れ気味の様子。エジプトの人は何でも顔に出るし、情緒の揺れが大きいので、特に気にしないでおきます。日本人としてはあり得ないほど顔に出してしまうわたしも、こういう印象を与えていたのか、と学ぶ日々。
関係ないですが、ターンメイヤを食べるといつも眠くなるのはなぜでしょう。
授業前半は不調。
ハーニーが出してくれたヘルバのパワーか、後半から段々調子が出てきて、元気になる。
今更ですが、単純に暑さでバテているのかもしれません。とにかく、一日に受け取る情報量が半端ない上、一日の間の温度差も激しく、楽しいことも辛いことも次から次にやってくるので、身体がついて行ってない気もします。
途中で息抜き?にクルアーンの章句をいくつか一緒に暗誦したら、ものすごい体が軽くなりました。こういう時は、フスハーを勉強していて良かった!と実感します。
授業後、一時間半ほどそのまま自習して勉強終了。
帰ろうとしたところで、珍しくハーニーが「タバコある?」と聞いてきます。
頼んでもいないヘルバをしょっちゅう奢ってくれて、チップを置いていこうとしても頑として受け取らないハーニーがタバコを欲しがっているのに、そういう時に限って切らしていました。
大急ぎで近所の売店まで走り、タバコを二箱買って戻り、一つ箱ごとハーニーに押し付けます。
「いや、一本でいいんだ、一本で」と箱を返そうとしますが、こっちも負けじと押し付けて、何とか受け取ってもらいました。
エロオヤジやしつこいナンパ、シーニーシーニー囃し立てるガラの悪い若者、厚かましいおばちゃん、あの手この手でひっかけようとする外人相手の商売人、そんなエジプト人が溢れている一方、通りすがりの外国人を家に招いてお茶を出してくれるおっちゃん、ジュースを奢ってくれたおっちゃん、一緒に道端でサンドイッチをほうばった若者たち、そしてハーニーのような純真で礼儀正しい労働者がいて、一瞬ごとにエジプト観が揺さぶられます。「良い人と悪い人がいる」のは世界中どこでも一緒ですが、エジプトは幅が広すぎます。
痩せっぽちのキリスト教徒のサイーディー。ハーニー、大好きやで。
そのハーニーにタバコを押し付けていたら、テレビで前にも見たことがある映画をやっていました。最初に見た時も気になっていたのでタイトルを尋ねたところ、محمد هنيدي(ムハンマド・へニーディー)のفول الصين العظيم(フール・ッシーン・ル=アジーム 偉大なる中国の豆)という映画がだそうです。
何が気になるかというと、この映画、エジプト人主演のカンフー映画なのです。
正確に言えば、エジプト人はカンフーができるわけではないのですが、憧れの中国を訪れ、そこでカンフーバトルに巻き込まれる、という筋のコメディーです。助演の中国娘がベタにカンフー使い、という設定。ちゃんと中国でロケしている立派な娯楽大作です。
早口のアーンミーヤで台詞はあまり聞き取れないのですが、台詞がわからなくても楽しめるくらい、良くできた映画です。香港映画やハリウッド・コメディーにもひけをとりません。日本で見ることはできないのでしょうか。字幕をつけて上演したら、結構人気になると思うのですが。
ムハンマド・へニーディーというコメディー俳優も、この映画自体も、かなり有名とのことです。この俳優さんは他の映画でも見た覚えがありますが、確かにすごく面白いです。
ちなみに、この映画の中で、中国人が「ボーヤ、ボーヤ、ボーヤ!」と言いながら携帯電話を車の窓から投げ捨てる場面があります。لا لا لاと字幕がついていたので、「ノー」の意味だと思います。時々エジプト人がわたしを見て「ボーヤボーヤ!」と叫んでいたのですが、元ネタはこの映画だということが分かりました。叫んでいるエジプト人も意味もわからず変な中国語とだけ思っているのでしょうが、こっちも中国語はまったくわからないです。最初は「坊や」のことかと思い、超意味不明でした。いや、ネタがわかっても相変わらず意味不明ですが・・。
近所をブラついて、ナッツ屋さんで木の実を買う。
このナッツ屋さんの店員さんが、大衆向けの普通の店なのに、エジプト人とは思えないほど(失礼)礼儀正しくて、感動しました。両替もイヤな顔一つせずやってくれて、ナッツも安くておいしかったです。
帰りに売店で飲み物を買おうとしたら、珍しく働いている女の子に話かけられる。
カイロ大学の学生で、卒業したら給料の良い国に働きに行きたい、みたいなことを話していたのですが、今ひとつ聞き取れず、聞き返しても「なんでわかんないのよ」という雰囲気で大声で同じことを繰り返すだけで、おまけに料理中に出てきたらしく右手の包丁を振り回しながらのトークだったので、ちょっとビビりました。エジプトの女子は怖いっす。
ちなみに、「カイロ大学の学生」には数え切れないくらい出会いましたが、そのほとんどが日本で「大学生」と言ってイメージするような人種ではありません。年齢もばらばらで、大抵は働いています。
こう書くと「苦学している立派な青年たち」をイメージされるかもしれませんが、必ずしもそんな清い雰囲気ではなく、ワイルドすぎてついて行けない人もいます。そういう時は、つくづく自分が籠の中でしか生きられないひ弱な人間なのだと思い知らされます。

スイカ売りのロバ posted by (C)ほじょこ
محمد هنيدي(ムハンマド・へニーディー)のفول الصين العظيم(フール・ッシーン・ル=アジーム 偉大なる中国の豆)
エジプト留学日記