エジプトのテレビで言語を観察すると、固めのニュースとか宗教番組、偉い人の演説などは、フスハーです。特にニュースは定型的な語り口をするものなので、アラビア語に限らず、一般に聞き取り易いものです。また、子供向けのアニメなども、教育目的でキレイなフスハーの場合があります。
これが討論番組などになると、段々アーンミーヤっぽくなってきて、ムサルサル(テレビドラマ)とか外国の娯楽映画の吹き替えになると、すっかりアーンミーヤです(少なくともわたしにはそう聞こえる)。フスハーとアーンミーヤの関係を巡って「識者に聞く」みたいな番組がよくあるのですが、フスハーの重要性を訴えている知識人の言葉が、結構アーンミーヤぎみだったりして、ちょっと可笑しいです。
バラエティ、お笑い番組なども、非常に難しいです。お笑いは、言語を問わず一番外国人にとって難しいものだと思いますが、フスハーとアーンミーヤの距離があるため、アラブでは格別難しいです(アーンミーヤから入った人にとってはそうではないでしょうけれど)。
ところが、今日気づいたのですが、同じドラマでも歴史物になると、フスハーで喋っているのです。イスラーム草創期のエピソードを扱ったドラマ(映画?)を見たのですが、発音の一部がエジプトなまりですが、ほとんど綺麗なフスハーで、わたしにとっては非常に聞き取り易かったです。日本で言えば、時代劇で「ござる」とか言っているようなものかもしれませんが、フスハー自体は日本語古文と違って、一定の領域ではちゃんと使われているので、まったく同じ事情ではありません。細かく観察すると、タシュキールがやたら誇張されていたり、表現が現代的でなかったり、ニュースのフスハーと違って「時代っぽさ」を意識的に演出しているのがわかります。
ちなみに、劇中では「偶像崇拝者」がベタにわけのわかんない石像を拝んだりしていて、笑ってしまいました。日本の信心深いおばあちゃんとかは、彼らから見るとこういうのと同類なのでしょうか・・・。
もちろん、フスハーでも格調高い「本物の古いフスハー」(クルアーンやハディース等)は非常に難しく、一口にフスハーと言ってもニュースと古いテクストとでは雲泥の差がありますが、所詮はドラマのフスハーなので、外国人にとっては、うまいこと一番聞き取り易いスタイルに落ち着いてくれているようです。
アラビア語を学習されている方は、ニュースや子供向け番組と並んで、時代劇をチェックすると役に立つかもしれません。
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エジプト留学日記